「法華仏教講座」第5回 「『大乗起信論』の本覚思想」報告

「法華仏教講座」第5回 「『大乗起信論』の本覚思想」報告
2023年3月25日 commons

令和5年3月25日(土)午後4時30分~、新宿・常圓寺祖師堂地階ホールを対面講義の会場として、当学林教学委員にして法華仏教研究会主宰の花野充道先生による「『大乗起信論』の本覚思想」の講義が、Zoomオンライン聴講もできるハイブリッド型の講義として執り行われた。
花野先生は、仏教思想研究・天台本覚思想研究の第一線で活躍される立場から、昨今の「本覚思想」に関する議論の大きな混乱と誤解の跋扈に収束を図るべく、その原因を説き明かされ、『大乗起信論』『涅槃経』『法華玄義』『摩訶止観』『摩訶止観輔行伝弘決』『大般涅槃経疏』等を引用して、鋭く重要な論点を示され、細かに解説してくださった。
その中で、例せば、玄奘の唯識説における阿頼耶識が妄識、『起信論』の阿梨耶識が真妄和合識であり、天台大師智顗の場合、地論師の如来蔵思想(真識縁起説)、摂論師の唯識思想(妄識縁起説)を、心生説にして「冥初は覚を生じ、覚より我心を生ず」と説くサーンキヤ学派の流出説に堕すと批判したこと―等々、興味深い重要事項が連続的に明かされた。
今回の講義で、先生は、『起信論』の本覚思想は如来蔵思想(唯心論・本覚法身)、天台教学の本覚思想は大乗空思想に立脚(実相論・本理法身)しており、両者の根本的な相違が、本有常住・遍一切処の法身に智慧を認めるかどうかにあることをご教示くださった。そして、それらを解説されなから、日蓮教学の立場がどのように理解されるべきかを皆に問いかけられた。
なお、今回の講義の核心部については、先生の玉稿が『法華仏教研究』第35号(近刊)に掲載される予定である。
当日は、仏教思想研究、日蓮教学研究の第一線で活躍する研究者をはじめ、多くの聴講者が集った。講義終了後の受講者の質問にも明快かつ詳細に解答したくださり、講義終了後、聴講者から大きな拍手が送られた。素晴らしいご講義であった。(スタッフ)