「法華仏教講座」第4回 「日蓮花押の解釈における諸問題―花押の母字と変化の理由を探る―」報告

「法華仏教講座」第4回 「日蓮花押の解釈における諸問題―花押の母字と変化の理由を探る―」報告
2024年1月6日 commons

令和6年1月6日(土)午後4時30分~、村上東俊先生による「日蓮花押の解釈における諸問題―花押の母字と変化の理由を探る―」の講義が、対面講義とオンライン配信による、ハイブリッド形式で行われた。

はじめに、これまでの日蓮花押の母字(花押が何をもとに作られているか)に関する先行研究について、中世日蓮門下における花押相伝から、近年の最新研究における解釈に至るまで、膨大な資料の一点一点を緻密に精査して、各時代における日蓮花押解釈について丁寧に紹介された。

次に、まずは日蓮聖人の前期花押について、日蓮聖人と同じ中世の僧侶であり、また日蓮聖人と同じく名前に「蓮」を持つ中尊寺初代別当蓮光の花押を対比し、花押の形状の共通点から両者の花押はともに名前の一部である「蓮」をもとに作られたであろう、と推察された。そして日蓮聖人の花押にみられる楕円形の箇所について、蓮の花びら―すなわち蓮弁―を模したものであろう、と美術的な観点からも私見を提示された。

講座の後半は日蓮聖人の後期花押について、『日蓮聖人真蹟集成』所収の日蓮遺文にみられる「蓮」字と、漫荼羅本尊の花押の形状の同調性の高さに着目し、後期花押も前期花押と同じく「蓮」をもとに作成したものであろう、と推察された。続けて、日蓮聖人の花押が前期から後期に変化した理由について、花押変化の前後における日蓮聖人の生涯を概観しながら、はらのけ(下痢)を含む複合的な理由であろう、と結論づけられた。これらの後期花押に関する考察の補助として、別紙に日蓮真蹟遺文にみられる「之繞」、並びに花押が変化する弘安元年における日蓮聖人の動向について、まことに詳細な資料をご用意くださった。資料を一目見て、多くの時間と労力を割いて作られた資料であることが分かった。

日蓮聖人の花押解釈に関する最新の研究に、会場に詰め掛けた多くの聴講者は、興味深く先生のお話に聞き入っていた。講義終了後は、聴講者から熱心な質問が寄せられ、一つ一つの質問に丁寧に対応された。(スタッフ)