講座「仏教哲学再考―『八宗綱要』を手掛かりに」⑤第2講 講義報告

講座「仏教哲学再考―『八宗綱要』を手掛かりに」⑤第2講 講義報告
2022年12月17日 commons

令和4年12月17日(土)、末木文美士先生による連続講座「仏教哲学再考―『八宗綱要』を手掛かりに⑤」後期第2回目が開催され、テキスト『八宗綱要』(講談社学術文庫)付章「禅と浄土」(436頁)の浄土宗についての講義が行われました。

はじめに、浄土宗の系譜と教判(浄土門・聖道門)をテキストで確認し、補足として凝然撰『浄土法門源流章』を引用し、法然以前と法然門下の系譜について解説されました。

次に、『無量寿経』は五存七欠とされているが、最初から五存のみであることに加え、異訳の一つである『大阿弥陀経』には「模範としての仏」と「救済者としての仏」が説かれていることを示し、現存している会本を比較することで、思想の発展が明らかになる、と指摘されました。また、『観無量寿経』は前十三観と九品段(後の三観)に分かれ、前十三観は禅・三昧に連なる観想念仏(唯心の浄土)、九品段の下品には悪人往生が説かれおり、悪人往生の道を開いた善導の解釈が、法然に影響をあたえた、と解説されました。

続いて、法然『選択本願念仏集』の全体の構成を説明した後、法然が善導と夢で対面したことに加え、「難易義・勝劣義」と「浄土門・聖道門」という新しい教判をもって浄土宗の系譜としたことを示されました。

最後に、法然門下である証空・長西・親鸞それぞれの解釈を明らかにし、講義終了となりました。

今回で『八宗綱要』は読了となりましたが、1月8日の第3回目は「鎌倉仏教の見直し」、最終回が「本覚思想と日蓮教学」となります。日本仏教を再認識するうえで大変参考になる講義内容です。新規聴講も充分について行けますので、皆様の聴講申し込みをお待ちしております。なお、本講座はリモート開催となっており、講義動画も受講者に配信し、期間内であれば何度でも見ることが可能です。詳細につきましては、「法華コモンズ」ホームページからご確認ください。来年もよろしくお願い申し上げます。(スタッフ)