令和8年8月29日(土)15時30分~、2026年度前期【法華仏教講座】第5回講義が、常圓寺祖師堂地階ホールを会場としてオンライン同時配信のハイブリッド型で講義が行われた。
今回は、開成高校教諭にして、仏教史を最先端で研究されている高名な石附敏幸先生を講師にお迎えし、「日蓮•鎌倉幕府•朝廷」の講題でご高説を賜った。
石附先生は、既に「興福寺大乗院の雑務職について」「王和宗論の再検討」「日蓮と鎌倉幕府」「日蓮と宗義天奏」「日蓮と法華講会」等々の優れた論攷の数々をものされている。
今回はそれらを踏まえながら、より大きな視点に立ち、(1)関東出身者たる日蓮の思考・行動に伏在する「エートス」の探求、(2)鎌倉武家社会における日蓮の活動や幕府権力との関わり方の探求、(3)日蓮の朝廷(天皇•院)への志向についての検証という、特には3つの視点から日蓮仏教の特質について講じられた。
論中、日蓮仏教の特質として様々なポイントを挙げられた。
・「反念仏」の姿勢。そこには、教義批判とともに、当時の念仏宗に見られた倫理的頽廃や反社会性への強いアンチテーゼで見られる。
・「理知的性格」。日蓮の宗教は、知性や修学を重んじる“インテリの宗教”である。
・日蓮は、主には、武家社会の中下級武士などの「中間層」を支持基盤としていた。
・「倫理性の高さ」。日蓮は、親への孝養など世俗の倫理を重視し、仏教思想と見事に融合させていた。
・日蓮は、当時の武士の信仰や生活において重要な徳目であった「正直」を、法華経信仰と深く結びつけた。
・さらに、幕府の最高権力者である得宗家(北条義時・泰時・時頼)に対して厚い信任と期待を寄せており、特に北条泰時が制定した武家法『御成敗式目』の「道理」の精神を高く評価していた。
・日蓮は晩年、身延期に入ると、朝廷に対し「宗義天奏(朝廷への働きかけ)」の動きを見せ、天照大神や八幡大菩薩を釈尊の垂迹と位置づける神仏習合思想を展開しながら、天皇家の宗教的権威を独自の視点で再定義しようとしていた。
ー等を指摘された。
大凡以上のように、日蓮に対して従来付与されてきたイメージ(攻撃的•排他的•国家主義的)を、信頼できる資料の精読によって、根本から問い直された、研究者・学徒必聴の非常に刺激的な内容であった。
また、先生は、講義終了後の質疑応答の時間でも大変丁寧に受け答えしてくださった。
素晴らしい2時間半であった。(スタッフ)

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