「法華仏教講座」第3回 「法華義疏』について」報告

「法華仏教講座」第3回 「法華義疏』について」報告
2023年6月24日 commons

令和5年6月24日(土)午後4時30分~、魚住孝至先生による「『法華義疏』について」の講義が、対面講義とオンライン配信による、ハイブリッド形式で行われました。

魚住先生は、日本思想史・文化史の立場から法華義疏の成立、また撰者とされる聖徳太子について、先行研究を踏まえたうえで詳細に説明されました。

講義はパワーポイントを使用して進められ、聖徳太子の画像や東アジア全体の地図など、さまざまな資料を紹介しながら説明をしてくださいました。特に、皇室に所蔵されている『三教義疏』を納めていた経帙(きょうちつ)に、三教義疏について記されていることから、三教つまり『法華義疏』『勝鬘経義疏』『維摩経義疏』が、一体として成立していたことを証示されました。

次に戦後の研究のなかには、『義疏』の内容に敦煌文献と同じ内容が見られることから、『義疏』は聖徳太子の撰述ではなく中国の撰述である、とする見方がある。しかし、そこには多くの問題点があることから、魚住先生は、『法華義疏』の原典の精査、思想内容についての考察など、再考察すべき多くの課題が残されていると指摘されます。

また、聖徳太子による冠位十二階の成立、十七条憲法の制定、仏教寺院の建立などの事蹟について、大陸・朝鮮半島を含め広く東アジアにおける文化史の観点から、日本が文明国の一員として認められるために行われたことを指摘されました。

以上、魚住先生は最新の研究成果により、『法華義疏』の成立と、聖徳太子の実像に迫るお話をお聞かせくださいました。(スタッフ)