講座「裏から読む鎌倉時代—日蓮遺文紙背文書の世界—」第4講 講義報告

講座「裏から読む鎌倉時代—日蓮遺文紙背文書の世界—」第4講 講義報告
2022年1月18日 commons

菊地大樹先生の連続講座「歴史から考える日本仏教⑧裏から読む鎌倉時代—日蓮遺文紙背文書の世界—」の第4講「日蓮を取り巻く金融経済の世界」が、2022年1月18日(火)午後6時半よりオンラインで開催されました。今回の講義では、参考資料として本郷恵子著『中世人の経済感覚』(日本放送出版会2004)が挙げられて、商業にはかかわらなかった江戸時代の武士像からは大きく離れた中世時代の武士の経済活動について、詳しく説明して頂きました。鎌倉時代には「借上」という金融業者(金貸し業)が発達して、多くの御家人が土地まで質草にして借金で台所を回していましたが、所領を3つも持つ千葉氏も例外でなく、借金で幕府の講師行事の「垸飯」役などを勤めていたようです。その資金調達役を任されていた法橋長専の紙背文書からは、資金繰りの困難さの嘆き節がうかがえます。千葉氏は、房総の他に鎮西や肥前にも所領がありながらも、京都の大番役などの経費調達はやはり金融業者の「介馬允」という借上げに頼るなど、借金で廻していました。こうした紙背文書から、当時の武士が「農村の領主」ではなく非農業的経済を営む「都市の領主」でもあったことがわかります。また寺院はその成立期から人流があり資本が集中・蓄積する場所で、千葉氏の拠点千葉荘の千葉寺は、天台談議所として学僧が往来し、法華経寺もまた千葉氏の経済基盤となっていたとのことです。

次回は2/15、今期最後の第5講義で「日蓮をとりまく百姓の世界」です。        (担当スタッフ)