講座「仏教哲学再考―『八宗綱要』を手掛かりに」③第2講 講義報告

講座「仏教哲学再考―『八宗綱要』を手掛かりに」③第2講 講義報告
2021年12月11日 commons

令和3年12月11日(土)午後4時30分から、末木文美士先生による連続講座「仏教哲学再考―『八宗綱要』を手掛かりに③」後期第2回目が開催されました。テキスト第六章「天台宗」を深く掘り下げた講義となりました。

はじめに、「止観の系譜」では禅観思想をとりあげ、精神統一をして対象を観察する観法から、仏を対象に観ずる観仏へと変化していったことを明らかにされました。また、禅宗の禅観は、既定の座禅法を否定していく教えであることを示されました。

次に、「『大乗起信論』の思想系譜」では、『大乗起信論』に説かれる認識論から新たな思想を生み出していく生成論として発展していったことを確認し、『大乗起信論』においては、真如(如来蔵)と無明が和合して阿頼耶識となり、真如(如来蔵)自体に隨縁のはたらきはないことを説明されました。

続いて、華厳の系譜(杜順・智儼・法蔵・澄観・宗密)である法蔵と宗密に焦点をあてました。法蔵『起信論義記』においては、真如自体に隨縁と不変をたて、隨縁真如を如来蔵、不変真如を真如門としていることを示したのち、真如と無明の関係性を具体的に解説されました。さらに、法蔵『華厳経探玄記』の華厳教判において、如来蔵縁起がどう位置づけられるのか、宗密『円覚経略疏』における真如縁起についてなど、詳細に説示され、思想転換の流れを見ていきました。

最後に、「『釈摩訶衍論』の問題」では、『釈摩訶衍論』に説かれる十六能入門・十六所入門・不二摩訶衍の三十三種差別について解説され、講義終了となりました。

令和3年度後期講座は全4回の講義となります。次回も第六章「天台宗」を深く掘り下げた講義です。本講義はもっとも重要な部分に差し掛かり、日本仏教を再認識する貴重な講義となっております。質疑応答も大変充実して勉強になります。皆様、聴講の申し込みお待ちしております。詳細につきましては、「法華コモンズ」ホームページからご確認ください。(スタッフ)