講座「仏教哲学再考―『八宗綱要』を手掛かりに」③第1講 講義報告

講座「仏教哲学再考―『八宗綱要』を手掛かりに」③第1講 講義報告
2021年11月6日 commons

令和3年11月6日(土)午後4時30分から、末木文美士先生による連続講座「仏教哲学再考―『八宗綱要』を手掛かりに③」後期第1回目が開催されました。大乗の根本であり『八宗綱要』の山場となる、テキスト第六章「天台宗」から開始されました。

はじめに、章安大師灌頂以降、天台大師智顗自身の多面的な側面が図式化され、さらに簡素化した『八宗綱要』における「天台宗」の解説は、整理がついているように見えるが、「天台宗」の正しい理解とはいえないことを前提にしなければならないとを指摘されました。

テキストに入り、「天台宗の宗名と経論」では、智顗自身は『法華経』を特別視していたわけではないことを示した後、「天台宗の歴史」を広範囲に見ていきました。

「五時八教」では、五時(乳・酪・生酥・熟酥・醍醐)と化法の四教(蔵・通・別・円)と化儀の四教(頓・漸・秘密・不定)の関連性を詳細に説明し、「蔵・通・別・円」に関してそれぞれテキストの図表を用いながら読み解き、「化法の四教」と「四土」と「仏身」の関係を解説され、テキストは「化法の四教」が中心となって展開していることを教示されました。

実践面である「一心三観・四種三昧」では、テキストに具体的な解説はなく、軽い捉え方であることが凝然自身の天台宗の理解だったことを指摘されました。

続いて、「法華経の捉え方」として、舎利信仰よりも経典信仰(経典を如来と見る)となることを示した後、地獄から仏まで含む十界互具の構造の意義を哲学的視点から論じられました。さらには、念仏と題目の共通性についてふれて、『選択集』で「念仏」は難易義より勝劣義によって選択されていること、また機法一体(衆生と仏が名号で出会う)としている西山派(証空)の思想には十界互具の構造がみえることなど、先生独自の視点から解説され、講義終了となりました。

令和3年度後期講座は全4回の講義となります。次回はさらに第六章「天台宗」を深く掘り下げた講義となります。末木先生の講義は、日本仏教を再認識するだけでなく、毎回高度な質問が飛び交い、大変参考になる講義でございます。聴講の申し込みお待ちしております。詳細につきましては、「法華コモンズ」ホームページからご確認ください。(スタッフ)