令和3年9月11日(土)午後4時30分から、末木文美士先生の講義「仏教哲学再考―『八宗綱要』を手掛かりに②」今年度第4回目が開催され、テキスト第五章「三論宗」の講義となりました。
はじめに、前回の補足として『大乗起信論』の構造について、末木先生直筆のノートを用いて教示されました。「無明」の位置付けについて考察されたあと、「真如」について『大乗起信論』以降の思想・展開を考えることの必要性を示されました。
テキストにはいり、三論宗は、三論(中論・百論・十二門論)よりも『大智度論』を引用し、議論されていることを指摘されました。さらに、インドの中観派は「般若経典と空」を密接に結びつけ、否定的に見ていくことを特徴とするのに対し、中国では「空と有」のような二項対立をさせ、「即」を用い、必ずしもどちらかが優れているとしないところに特徴があると解説されました。
次に、破邪顕正を宗義として、常に否定していくことで教義を主張しないのが三論宗の教義であり、「四重の二諦」において、「有と空」と「俗諦と真諦」を関連させ、否定に否定を繰り返し、最終的には言葉では言い表せない境地(教を超えて理に至る)となっていくことを説明されました。
最後に、『中国思想の流れ』を参考に、三論宗の大成者である吉蔵に焦点をあて、3つの項目を設け(人と著作・諸説の批判・真俗を超えて)詳しく解説され、講義終了となりました。
令和3年度前期講座は全4回の講義となりました。末木先生の講義は、後期講座においても継続して行われます。日本仏教を再認識するだけでなく、毎回高度な質問が飛び交い、大変参考になる講義でございます。聴講の申し込みお待ちしております。詳細につきましては、「法華コモンズ」ホームページからご確認ください。(スタッフ)