講座「『法華経』『法華文句』講義」第24回講座報告

講座「『法華経』『法華文句』講義」第24回講座報告
2020年5月19日 commons

2月下旬より本格化した新型コロナ・ウィルス禍の影響により、「『法華経』『法華文句』講義」は3月と4月の2回分が中止となりました。その後の緊急事態宣言の継続もあり、5月よりの講義は動画配信しての開講とすることに決まりました。菅野先生も大学での授業がZoomを使ってのオンラインとなったために、Zoomでの自撮り講義をすでに習得しておられたので、コモンズからのお願いを御快諾頂き、無事に第24回となる本講義を5月19日に配信することが出来ました。
今回のビデオ講義では、いま勉強しているところの全体的な位置づけのおさらいからスタートしました。経典の随文釈義の注釈書としての「序」には、「通序」と「別序」があって、通序とはすべての経典に共通する「如是我聞~」で始まる序文であり、「別序」とはその経典独自の始まりを告げる序文で、『法華経』では「爾時世尊、四衆囲繞~」からが別序となります。これまで読んできたのは通序であり、会座の聴衆が列挙されている箇所までです。『文句』での通序の注釈では、弟子の過去世が実に詳しく(光宅寺法雲などより2倍ほど長く)、声聞衆・菩薩衆・雑衆(天龍八部・人)が四種釈(因縁、約教、本迹、観心)で注釈されています。いまはその最後となる天龍八部衆と人の阿闍世王が登場する「雑衆」のところを学んでいます。

今回の本文は211頁の1行目の「「摩那斯」(龍王)は、此には大身と云う」からです。次の最後の八龍王となる「漚鉢羅」龍王の後は、「四緊那羅王」、「四乾闥婆王」、「四阿修羅王」、そして「「四迦楼羅王」の最後まで(220頁の6行目)が読み終わりました。では、その内容を簡単に報告します。
八龍王の「摩那斯」は大身・大意・大力などの別名で、「漚鉢羅(うはら)」はUtpalakaが青蓮華をあらわすので黛色蓮華地ともいう。
緊那羅王は天の楽神で、真陀羅や疑神また人非人(人に似るが角あり)の別名で、「法」「妙法」「大法」「持法」の四緊那羅で、四法の法門(化法の四教)を奏すという。
乾闥婆王は香を食事として、嗅香・香陰の別名で身から香を出す。天帝の俗楽(民間音楽や外来音楽)の神で、「楽」「楽音」「美」「美音」の名をもって弦管楽の演奏に優れる。
阿修羅王は、SURA(端正)の頭に否定のAがついてASURA(不端)といい、無酒神ともいう。ゾロアスター教の最高神アフラマズダから来る名前。2種あって、餓鬼道の者は大海の辺、畜生道の者は大海の底にいるという。「婆稚」は別名を被縛、「佉羅騫駄」は広肩胛、「毘摩質多羅」は浄心、「羅喉」は障持という。
迦楼羅王は金翅鳥のガルーダで、鳳凰ともいう。毒蛇を食べる孔雀がモデルで、龍を喰らうとする。「大威徳」「大身」「大満」「如意」の四迦楼羅王がいる。

以上の講義のなかで、迦楼羅王の名前については菅野先生に思い出があり、先生が1988年に創価大学に勤め始めた頃に、岩波文庫『法華経』の梵文訳をした岩本裕先生が在職しており、岩本先生が書いた書評があまりに批判的だったため掲載を断られて、仕方なく岩本先生は自分の雑誌『迦楼羅』にその書評を載せた、というエピソードを紹介してくれました。
また菅野先生は、序品の注釈が巻一から巻二までの長大になったのは、智顗の講義が長かったのではなく、灌頂が注釈書『文句』の特色を出して智顗の業績を高めるために、列挙された聴衆を人一倍調べて詳しく書いたためではないか、との推測を語られました。
次回は、220頁の韋提希夫人の子・阿闍世王の話からで、いよいよ通序が終わって別序が始まります。第二回目の講義動画の配信となりますので、集中して勉強が出来るビデオ講義での受講をぜひお楽しみください。(スタッフ)