講座⑥「日蓮聖人遺文研究」第6回講座報告

講座⑥「日蓮聖人遺文研究」第6回講座報告
2017年3月29日 commons

平成29年3月24日(土)、都守先生の『日蓮聖人遺文研究』の第6回が開催されました。

同講座は、初回から第4回までは『立正安国論』に関するご講義でしたが、先月の第5回目と今回の6回目は『法華取要抄』の講義となりました。

前回は『法華取要抄』の概要や背景が中心の講義でしたが、今回は完成本である『法華取要抄』と、同抄の草稿と思われる『以一察万抄』『取要抄』の三書とを比較して読むことで、宗祖の真意に触れるという試みの講義になりました。

『以一察万抄』『取要抄』は、『延山録外』という4冊からなる写本のうちの第3冊目に収録されている御書で、『昭和定本』や縮刷遺文には収録されていません。『延山録外』は身延山久遠寺26世の日暹上人が、当時身延にあった宗祖真蹟遺文や要文など、70数編を書写した遺文集です。

『以一察万抄』『取要抄』の二書は、講師の都守先生が約20年前に、「『法華取要抄』の草案について」を『大崎学報』に発表してから注目されるようになりました。

受講生として、三書を比較して読んで興味深かった点はいくつかあります。特に三大秘法について、宗祖のご説明に表現上の相違があることは興味を引きました。完成本の『法華取要抄』には、

「問うて云く、如来滅後二千余年、龍樹・天親・天台・伝教の残す所の秘法何物ぞや。答えて曰く、本門の本尊と戒壇と題目の五字と也」と、三大秘法が並列に挙げられています(「本門本尊与戒壇与題目五字也」)。しかし草案の『取要抄』では、同箇所が

「問うて云く、天台・伝教の残す所の秘法何物ぞや。答えて曰く、本門の本尊と戒壇、題目五字の宝珠を以て母の乳を一切の幼子に含めざる、是れなり」と、題目の五字が他の本尊と戒壇の2つを包含しているかのようにも読めます(「本門本尊与戒壇以題目五字宝珠」)。

昔から三秘と一秘には様々な解釈がありますが、『取要抄』の表記は注目すべきだと思いました。

 

今回の第6回講義で『日蓮聖人遺文研究』は終了しました。半年はあまりにも早かったです。最後に、今回出席された11名の受講生に修了証が授与されました。

(文責・大賀義明)