「法華仏教講座」第3回 「日蓮僧の中世天台寺院における修学 ―身延山久遠寺身延文庫所蔵資料からの検討―」報告

「法華仏教講座」第3回 「日蓮僧の中世天台寺院における修学 ―身延山久遠寺身延文庫所蔵資料からの検討―」報告
2023年12月2日 commons

令和5年12月2日(土)午後4時30分~、新宿・常圓寺祖師堂地階ホールを対面講義の会場として、大正大学教授・渡辺麻里子先生による「日蓮僧の中世天台寺院における修学 ―身延山久遠寺身延文庫所蔵資料からの検討―」の講義が、Zoomオンライン聴講もできるハイブリッド型の講義として執り行われた。
渡辺先生は、天台宗の未刊行教義書や身延山久遠寺身延文庫聖教の調査に関わり、その最新の研究成果に基づいて、貴重な内容をご講義くださった。
今回、先生は、特に、身延山久遠寺身延文庫聖教所蔵の諸資料によって、武蔵国仙波北院(喜多院)、武蔵国金鑚大光普照寺、近江国成菩提院、近江国園城寺など、天台の談義所、学問寺として著名であった寺院における日蓮教団の学僧の修学の様相を具体的に講じてくださった。
中世に学問所として機能していた天台系寺院は、比叡山の焼き討ち後の復興、その後の度重なる罹災など、当時の資料が遺っていない場合が多く、身延文庫所蔵の資料は現在、中世の天台学を解明する貴重な資料と位置づけられていることをご教示いただいた。
また、先生は、はじめてこうしたことに触れる受講者のために、中世天台談義書や天台談義所に関する基礎、代表的な法華経談義書や三大部談義注釈書などについても詳細にご教示くださった。
講義中盤からは、中世における学問の様相を、特に、尊舜や身延山第12世日意(1444~1519、天台名・泰芸)を例に取って詳説され、講義の終盤では、『三大部廬談』の内容・構成、そして、身延文庫蔵本などにについて、委細にご教示賜った。
今回の配布レジュメはA4紙30枚からなる膨大な分量であったが、話の運び方が巧く、二時間内で、しかも分かり易くすべてを伝えてくださった。練られた内容と弁舌の爽やかさとから、二時間の講義は瞬く間に過ぎ去った。
日蓮門下の教学の歴史を考究する上で極めて重要な内容であり、コモンズで本講義を執り行わせて頂けた意義は甚大である。
先生の貴重な講義に、聴講者一同から惜しみない拍手が送られた。(スタッフ)