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令和2年1月18日(土)、常圓寺祖師堂地下ホールにて、法華仏教講座〈令和元年度〉第4講、前川健一先生(創価大学大学院文学研究科教授)による「日蓮の専修念仏批判」の講義が執り行われた。
当日は日蓮研究の専門家や学徒が多く集まり、聴講者の知的関心を的確に見据えた素晴らしい講義であり、盛会となった。
ご講義のスタイルは、パワーポイント資料(プロジェクタ)と補助資料を用いたハイテンポ且つ明快なもので、多くの同胞の範を示されるものであった。
周知の通り、法然の専修念仏への批判は、日蓮の宗教活動の起点的な位置付けが与えられるもので、その意義を精査することは、日蓮教学研究上、極めて重要である。
前川先生は、その意義を、今日的な視点からあらためて確認され、次いで、『七箇条起請文』(元久元年)、『興福寺奏状』(元久2年)、『山門奏状』(貞応3年)、『摧邪輪』(建暦2年)などの資料を駆使されながら、中世の専修念仏批判の実態を紹介。続けて、法然における専修念仏の教学的位置付け、 証空、長西、弁阿、良忠等の学説を辿りながら、法然以後の浄土宗の教学史的展開など、その特色を精確にご紹介くださった。
まとめると、既成諸宗からの念仏批判は、
・念仏は通仏教の行業、独立の宗派とするのは不可。
・念仏の本質は観念、口称は劣位の行業。
・諸宗・諸行・諸神仏の否定は、多様な機根の救済を妨害、仏教を破壊、亡国を招来。
の凡そ3点に集約されるとご教示くださった。
一方、こうした諸宗からの批判対する浄土宗側の対応は、
・他宗・諸行への批判の抑制
・機根の多様性を容認、浄土門は劣機のための信仰
・諸行往生の許容
の凡そ3点から織り成されたことをご指摘頂いた。
以上のことを前篇とする形で以下、講義は、日蓮の専修念仏批判の全容とその意義の解明へと進んでいった。
前川先生は、日蓮の念仏批判の様相を時系列を追いながら鋭く分析され、日蓮の専修念仏批判の枢要を厳正に論じられた。
日蓮の専修念仏批判の基本線は、法華経(とその題目)のみを唯一の正法とし、それ以外の教えへの帰依を謗法と見る立場であること、日蓮の専修念仏批判の骨子が、
・阿弥陀仏信仰・往生極楽信仰そのものへの批判。
・唯一正法の擁護(多様性の保持は一切顧慮されない)。
・浄土宗の独立性についての関心の稀薄性(時代状況の推移も影響)。
という点にまとめられることをご教示頂いた。その上で更に、日蓮の機根論への対応、専修念仏批判に関連する様々な問題についても論及された。
なお、前川先生は、講義終了に際して、日蓮仏教の「再歴史化」についても所感を吐露してくださり、当学林がもつ未来へのヴィジョンに貴重な提言を行って下さった。
総じて、前川先生は、これまでの研究史のポイントを全て踏まえられ、これまでの総決算、そして現時点での最高水準の総合的研究を提示された。
その場が、当学林の「法華仏教講座」であったことを誇りに思う。(スタッフ)
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