「『吾妻鏡』と鎌倉仏教」第1回講座報告

「『吾妻鏡』と鎌倉仏教」第1回講座報告
2017年10月21日 commons

平成29年10月21日(土)、新宿常円寺において菊地大樹先生による「『吾妻鏡』と鎌倉仏教」第1回目の講義が執り行われました。
同講座の受講希望者には、歴史研究や日蓮聖人研究の専門家をはじめ、これから本格的に鎌倉仏教を学びたいという方々が多く、各方面から聴講者がお越しくださいました。スタッフとしては有難いかぎりです。
当日、聴講者に用意されたテキストは、菊地先生作成のレジュメ二種類(テキスト本体と史料編)と補助資料(コラム記事)一種類。先生作成のレジュメは流石に大変よく練られた構成で、特に資料編のボリュームと内容の豊富さに圧倒されました。配布資料だけからも、歴史学研究のまさしく第一線で活躍される先生の「知」の世界の一端に触れることができ、既に、開講前の待ち時間の段階から、レジュメを手に取った受講者の満足した様子が伝わってきます。
学林長による講師紹介の後、いよいよ先生の講義が開始されました。
菊地先生は最初に、先生の准教授としての仕事場である東京大学史料編纂所について紹介され、ご自身のご経歴や『吾妻鏡』の思い出などを語って下さり、それから講義の本題に入られました。
今回は、全六回講義全体の第1回目として総論的に「『吾妻鏡』と鎌倉仏教」をテーマとしてお話し下さいました。
本題の「はじめに」では、『吾妻鏡』の諸本(写本・版本)と刊本、そして研究史の要点、歴史上における『吾妻鏡』の受容の様相を分かり易く解説して下さり、それらを踏まえて、①『吾妻鏡』冒頭の記事、②鎌倉幕府の「成立」、③頼朝将軍記の終焉―以上の三項目を取り上げながら、「『吾妻鏡』の宗教構造」について詳細に論じられました。そして、「おわりに」では、宗教史料としての『吾妻鏡』について、①歴史と物語、②鎌倉幕府の宗教的枠組み、③鶴岡八幡宮の政治的役割、の三つの視点からポイントを教えて下さいました。
菊地先生の御講義は、論理的且つ穏やかな語り口で、明快そのものです。
そして、鎌倉時代の研究を深めたい方、日蓮聖人を正確に読み解きたい方に向けて、重要なポイントを何点も示して下さいました。また、同一講座の中で、専門家にも、初発心の学徒にも、同時に有益な情報を提供される器用さを持ち合わせておられ、非常に温かなお人柄と、学者としての懐の深さに直に触れることができました。
講義終了後も、受講者の初歩的な質問から、専門的な質問まで、すべて懇切丁寧に応答されていたのも大変印象に残りました。
次回の菊地先生の講座は、11月18日(土)午後2時〜です。日蓮門下の研究者・学徒のみならず歴史研究を志す研究者・学徒も必聴の講義と存じます。
より多くの皆さまのご聴講をお待ち申し上げております。(スタッフ)