令和7年11月5日(水)、末木文美士先生による講座「仏教哲学再考②−『大乗起信論』を手掛かりにⅤ−」の第18回目が開催された。今回は、空海・最澄と『大乗起信論』をテーマとした講義になった。
はじめに、空海の『弁顕密二教論』『秘蔵宝鑰』等では「本覚」という概念そのものは最高段階に位置づけられていないが、経典解題類の著作では、『釈摩訶衍論』(以下『釈論』)を引用し、「本覚」の位置づけが『大乗起信論』(以下『起信論』)と比べてはるかに高くなっている、と指摘された。例として、『大日経解題』では「本覚」を仏の本源的な覚心としていること、『金剛頂経解題』では「本覚」が諸仏を統合する原理に高められていることなどを解説された(末木『鎌倉仏教展開論』、トランスビュー、2008、81頁)。
続けて、師茂樹氏『最澄と徳一』(岩波新書、2021)の論争過程の図を参考にして、最澄は『起信論』を実教に位置づけ、『釈論』を偽撰と見ていたことを説明された。さらに最澄は、「真如凝然」とする徳一に対し、「随縁真如」を高く評価していることを示された。
最後に、法相宗の真如論(深浦正文氏『唯識学研究 下』を参考)は、真如からの縁起ではなく、現象たる阿頼耶識所蔵の種子より展開される阿頼耶識縁起であり、「真如凝然不作諸法」を説き、現象と真如は「不一不異(不即不離)」の関係としていることを解説され、講義終了となった。
次回の開催は12月を予定しております。末木先生の講義は、以前の復習を兼ねて進んでいくため、新規聴講でもまったく問題ありません。また、先生の最先端な知識を拝聴できる貴重な機会となっております。皆様の聴講申し込みをお待ちしております。なお、本講座はリモート開催となっており、講義動画も受講者に配信し、期間内であれば何度でも見ることが可能です。詳細につきましては、「法華コモンズ」ホームページからご確認ください。(スタッフ)