去る令和7年7月5日、法華仏教講座第4回、坂井法曄先生をお招きして「千葉一族の信仰と富木常忍の周辺」講義が行われました。
坂井先生には2018年、2023年にもご講義いただき、毎回非常に興味深い内容をご披露いただいているのですが、今回は富木常忍と、彼の仕えた千葉一族の信仰面
から解説いただきました。
まず千葉県の特色としては、やはり日蓮系の寺が他の都道府県と異なり天台系よりも多いことが挙げられることから始まりました。また現在の千葉県の元となっ
た上総、下総、安房の位置関係を地図上で確認いただき、続いて下総を支配した千葉氏の家系を桓武平氏からの流れで詳細に説明いただきました。そして千葉氏
の家督が下総権介に任じられてから千葉介(ちばのすけ)という称号になり、千葉氏になったとのこと。一族の中から寺門派の僧侶が出たり、嫡流にも関わらず
元寇の役により肥前千葉氏として分かれた中から日蓮系僧侶も輩出しつつも、本流は浄土系の信仰の家系であったことを示されました。また千葉氏が富木常忍を
スカウトした場所、また富木常忍が日蓮聖人と邂逅された場所が京都ではなかったかとの論拠を示されました。富木常忍は平安時代から儒教の論語等を教授した
明経博士の家系であり、京都の六条若宮の再建に上京していた際、因幡国出身の富木蓮忍(常忍の父と比される)・常忍親子を文筆官僚としてスカウトし、天台僧
として京都に滞在していた日蓮聖人と邂逅していた説が近年立てられているとのことです。
さらに、富木常忍が日蓮門下でありつつ浄土信仰の強い千葉氏に仕えつつ他宗派にも当然ながら公平な訴訟の処断をしていたことなどを示されました。
他にも千葉氏の子孫には日目上人以外にも大石寺門徒になった者があることや、日蓮系と浄土系で神祇信仰の差異(前者は内包、後者は否定)、稲荷神社の別当
を富士福正寺住職が務めるなどの文書の発見など、非常に興味深いものでした。
坂井先生の深い研究に感銘を受け、先生の今後の更なる探究に期待しております。(スタッフ)