令和7年7月2日(水)、末木文美士先生による講座「仏教哲学再考②−『大乗起信論』を手掛かりにⅣ−」の第16回目が開催された。前回に引き続き、「空海と『釈摩訶衍論』」を主題にした講義となった。
はじめに、前回に引き続いて空海『弁顕密二教論』に見られる『釈摩訶衍論』(以下『釈論』)の引用を解読された。空海は、言語化できないとする『釈論』の説(自性法身=不二摩訶衍)に対し、説かれえない仏の世界が法身説法をもって表出できるとして、密教の優位性を主張していたことを示された。さらに、『秘蔵宝鑰』と『十住心論』における『釈論』の引用を示し、九顕一密(顕密の優劣)と九顕十密(密教への統合)といった密教の位置づけの際にも空海が『釈論』を使用していることを解説された。
続けて、末木著「本覚思想をめぐって」(『鎌倉仏教展開論』、トランスビュー、2008、所収、75頁)を参考にして、『弁顕密二教論』『秘蔵宝鑰』『十住心論』などに見られる「本覚」は、必ずしも密教の最高段階には位置づけられていないこと、他方『大日経解題』『金剛頂経解題』などにおいては最高の法身仏やあるいは諸仏を統合する原理として「本覚」の語を用いていること、などを指摘された。
最後に、来学期は①空海の「本覚」論と『釈論』、②最澄の「真如」論と『起信論』、③安然の「真如」論と『釈論』、④その後の『起信論』と『釈論』、をテーマに行う予定であることを聴講者に述べ、講義終了となった。
次回の開催は10月を予定しております。新規聴講もまったく問題ありません。先生は聴講者に対し、分かりやすく解説して下さいます。最先端な知識を拝聴できる貴重な機会になることは確実です。皆様の聴講申し込みをお待ちしております。なお、本講座はリモート開催となっており、講義動画も受講者に配信し、期間内であれば何度でも見ることが可能です。詳細につきましては、「法華コモンズ」ホームページからご確認ください。(スタッフ)