令和7年5月7日(水)、末木文美士先生による講座「仏教哲学再考②−『大乗起信論』を手掛かりにⅣ−」の第14回目が開催された。今回の講義は、「空海と『釈摩訶衍論』」を主題にした内容となった。
はじめに、今までの復習として、『大乗起信論』(以下『起信論』)と『釈摩訶衍論』(以下『釈論』)の相違点を解説された。『起信論』は、二項対立図式を基本としながら三項図式(三大、如来蔵・無明・阿梨耶識、本覚・始覚・不覚)が加わっているが、『釈論』は『起信論』の体系を組み込みつつも、それを低く位置付け(後重)、二元論(真如・生滅)を超えた、一元的絶対原理としての不二摩訶衍を頂点としていることを示された。
続けて先生は、「『釈論』は、因縁を超越した、言葉では表現できない世界観として不二摩訶衍を立てている。一方、空海はその絶対性を認めながらも『釈論』を顕教に位置付け、密教では法身説法としてその世界観を言語化できるとしている。さらに、安然に至っては、真如を不二摩訶衍化(真如の一元化・絶対化)して理解し、不変真如と随縁真如という概念が入ってくる」と指摘された。
最後に、空海の著作を、⑴教判に関するもの(『弁顕密二教論』『十住心論』『秘蔵宝鑰』)、⑵教義に関するもの(『即身成仏論』『声字実相義』『吽字義』)、⑶経典解題など(『般若心経秘鍵』など)の三つに分類して、『釈論』が用いられる『弁顕密二教論』に焦点を当てた。その中で該当する箇所を確認して、詳細に解説され、講義終了となった。
次回も引き続き、空海の思想に焦点をあてた講義となります。末木先生の最先端な知識を拝聴できる貴重な機会になることは確実です。先生は聴講者に対し、分かりやすく解説して下さいます。新規聴講も問題ありません。皆様の聴講申し込みをお待ちしております。なお、本講座はリモート開催となっており、講義動画も受講者に配信し、期間内であれば何度でも見ることが可能です。詳細につきましては、「法華コモンズ」ホームページからご確認ください。(スタッフ)