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本年度の最後になる菅野博史先生の後期第6回(通算82回)「『法華経』『法華文句』講義」が、去る3月31日(月)午後6時半より常円寺祖師堂地階ホールにて開催されました。
今回の『文句』テキストの始まりは、750頁2行目の「「将欲誘引」の下は、是れ密かに二人を遣わして誘引す」からです。随文釈義の経文内容は、父(長者)の威徳を怖れて父の屋敷から逃れた窮子が仕事と食べ物を求めて貧しい里に行ったところ、父は窮子の分際(レベル)に合わせた貧しい姿の使用人を遣わして、窮子に便所掃除の仕事を紹介して就かせて、自らも貧しいに身なりになって共に便所掃除をしながら窮子に話し掛ける、というところまでです。
次に科文ですが、始めの「叙意分科」では「「将欲誘引」以下は、第一に教に斉(かぎ)っては、近くは三車によって子を救うことを領解し、遠くは波羅柰(ヴァーラーナシー)に権(方便)を施すことを領解する。次に「又以他日」以下は~」と、とあります。続く次の科文には「斉教領」「擬宜を釈す」とあって、今回の講義で注目したのは、この「教に斉って(=限って)了解する」という「斉教領」、そして「擬宜」という二つの解釈の仕方でした。
レジュメの語句注釈では『織田佛教大辞典』が引かれています。「二領」の項目には「一に探領、二に斉領なり」とあり、探領については「法華経信解品に於いて四大声聞が自己の領解を陳ぶるに、如来未出世の先き法身地に於いて、声聞の機を照さるる大悲のさまを領解するを探領という」と説明しています。また「斉教領」については、この項目とは別に「斉領」の項目があって、こちらの方が分かり易いです。「法華経信解品に於て迦葉等の四大声聞が佛の一代五時の説法を領解するに、正しく吾身の上に受けし教義の分斎に限って領解するを斎領と云ひ、更に進んで仏の本意を探りて領解するを探領と云ふ」とあります。教義に限って領解する、本意を探って領解する、という二段構えの理解です。
また擬宜は、「よろしきところをおしはかる」と読んで、織田辞典では「説法を衆生にあてはめて之を受け得るや否やを考ふること」とあります。一代五時の華厳時に悟りを直接に説法したが理解されなかったことが「長者が立派な姿をした使人を窮子に近づけ逃げられたこと」に譬えられています。この次の阿含時が、貧しい身なりの二人を遣わした誘引に当り、「長者窮子の譬え」がそのまま一代五時の教判をつくる素になっています。
菅野先生は講義の最後に、玉城康四郎先生が「長者窮子の譬え」は仏教そのもの」と云われたという印象深いエピソードを紹介して、本年度最後の講義を終了されました。次回は、『文句(Ⅲ)』755頁10行目の「「即脱瓔珞」の下は~」からです。ぜひ受講いただき、「仏教そのもの」の信解品の譬喩を味わって下さい。(担当スタッフ)

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