令和6年12月4日(水)、末木文美士先生による講座「仏教哲学再考②−『大乗起信論』を手掛かりにⅡ−」の第11回目が開催された。今回の講義は、「『釈摩訶衍論』の真如論」を主題とした内容であった。
はじめに、齋藤嘉文『跳訳 道元』(2017、ぷねうま舎)を参考にした「世界(応身)・世界の外部(報身)・世界海(法身)」の関係図と、『法華経』見宝塔品の二仏並座の思想(生者・死者・生死一体)を比較し、大乗仏教の基本的な世界観を説明された。
次に、『釈摩訶衍論』(以下、『釈論』)の中心となる真如論について解説された。先生は、「『大乗起信論』が真如と生滅を二元的に捉えているのに対し、『釈論』はそれらをトータルな形(対等)で捉えようとしており、真如そのものに働きがあるとするのが特徴」と述べられた。その具体例として、「二種本法各有十名」を説明し、到達される法(所入)としての一体摩訶衍(一なるもの・純化)と三自摩訶衍(多様性なるのも・純化されていない)は対等な関係にあることを示された。
一方、法への入口(能入)では、心真如門と心生滅門は一体化できないもの(「二門名字差別」)として区別され、真如門は「一向雑乱住位」(様々な要素があり段階づけられない=カオス的)、生滅門は「向上門、向下門」(流動的なものとして段階づけられる=整序的)とする『釈論』の見解(「同異分相門」)を説明された。
最後に、『釈論』は「真如門と生滅門」(能入)と「一体摩訶衍と三自摩訶衍」(所入)の関係について説かれていることを強調して、講義終了となった。
次回は年明けの1月8日(水)に開催されます。末木先生は聴講者に対し、分かりやすく解説して下さいます。新規聴講も問題ありません。皆様の聴講申し込みをお待ちしております。なお、本講座はリモート開催となっており、講義動画も受講者に配信し、期間内であれば何度でも見ることが可能です。詳細につきましては、「法華コモンズ」ホームページからご確認ください。(スタッフ)