2022年4月9日(土)、今年度最初の法華仏教講座「天台と三論―久遠実成を考える―」が行われました。講師は村上明也先生。テーマは「天台と三論」ということで、主役は智顗と吉蔵。智顗は天台教学、吉蔵は三論教学、それぞれの大成者です。
はじめに、これまでの先行研究について概観し、智顗の著述と吉蔵の著述に依用関係があり、智顗の著述は智顗の講説を弟子の灌頂が編集していることから、天台と三論における教判論や経典観を探るポイントとして、年代的に吉蔵の著を参照し得る状況にあった灌頂に関する研究を挙げます。次に、天台と三論の教相判釈について解説し、『法華経』の「過去久成」、『涅槃経』の「未来常住」について、両者のロジックは類似しているが、教理史の視座から両者の共通点として、『法華経』より『涅槃経』が優れる、とする法雲の学説に対する批判であることを指摘します。続けて灌頂『大般涅槃経疏』の記述から、灌頂が吉蔵の影響を受けながら、どのように天台独自の学説として発展的に継承させていったのかについて詳述されました。
村上先生は、豊富な資料をご用意され、全ての資料を「原文」「書下し文」「現代語訳」の三段階に分け、さらに重要な箇所には傍線を引いて説明してくださいました。また、時にホワイトボードに図を描きながら、受講者が理解しやすいように懇切丁寧にご説明くださいました。(スタッフ)