平成30年5月12日(土)新宿・常円寺にて、松本史朗先生による「『法華経』の仏教思想を読む」第2回「「方便品」の読解「一乗」と「仏乗」の意味」の講座が行われました。
松本先生はまず「方便品」では記載されていない、「譬喩品」の散文部分での“シャーリプトラが実は菩薩である”という記述が、『法華経』の思想的な立場を一切衆生が成仏できうる”仏乗”から菩薩のみが成仏できる”大乗”へ、または”一乗真実説”から”三乗真実説”へと変更するための重要な理論であると示して頂きました。
またシャーリプトラに説いた、仏陀の仏智の記述が、パーリ仏典の『律蔵』「大品」を下敷きとしつつも声聞にとって「難見」「難悟」であるとされ、その理由が過去世から連綿と修行を続けていた仏陀と、仏陀から教えを受けているため修行期間が最長でも「四十余年」となる声聞を比較して、修行・聞法の期間の長短にもとづいて結果である果報の優劣があるという、極めて合理的な考え方が見られると解説して頂きました。
その後「方便品」が原始仏典や仏伝を下敷きにしていること、「方便品」からは衆生が無上正覚を得て成仏するのは、未来の時点であると考えられること等を、実際の記述を基に解説頂きました。また、「一乗」=「仏乗」が、「仏智」を意味すると思われることも示して頂きました。
緻密な読解による成果を開陳して頂いた松本先生に感謝申し上げます。誠に有難うございました。