令和8年1月7日(水)、末木文美士先生による講座「仏教哲学再考②−『大乗起信論』を手掛かりにⅤ−」の第20回目が開催された。今回は、「古層の形成と日本密教」についての講義であった。

はじめに、丸山眞男氏の「古層論」(『忠誠と反逆』、ちくま学芸文庫、1992)について説明があった。丸山氏は、「記紀神話」の冒頭分析から「つぎつぎ、なりゆく、いきほひ」という歴史意識が日本の根底にあり、合理化した近代社会を実現できないでいる、と主張した。これに対し先生は、「古層」に類する発想(アニミズム論や縄文文化論など)は史実として確認し難いが、仏教以前に通底するものがあるとすればシャーマニズム的呪術であり、固定的な「古層」ではなく、歴史的に形成され変動する「基層」ではないか、と指摘された。

次に、仏教と「基層」として、死生観の観点から「業と輪廻(三世因果論)」を取り上げた。先生は、「これは東アジアの仏教で共通する考えであるが、日本の特殊性は、長い輪廻というよりも、来世を中心としており、浄土往生思想や即身成仏論という矛盾と併存していく」と示された。さらに密教神秘主義が、先端理論という面と一般民衆に定着して基層化する面の二重性をもっていること、縁起説と基体説の対立、法身の説法(密教)と応化身の説法(顕教)、『釈摩訶衍論』の神秘主義、について詳細に解説された。

最後に、即身成仏といった高度な密教教理とその基層化の関係について、「五来重氏は民俗学の立場から両者の断絶を主張するが、決して両者は無関係でなく、高度な教理が通俗化(「密」の言説を「顕」の言説として解釈)しながら定着していったとすべきではないか、その媒介としての呪術(仏教的呪力)ではないか」と先生自身の立場を明確にされ、講義終了となった。

この講座は、2026年度後期講座から再開されます。末木先生の講義は、以前の復習を兼ねて進んでいくため、新規聴講でもまったく問題ありません。また、先生の最先端な知識を拝聴できる貴重な機会となっております。皆様の聴講申し込みをお待ちしております。なお、本講座はリモート開催となっており、講義動画も受講者に配信し、期間内であれば何度でも見ることが可能です。詳細につきましては、「法華コモンズ」ホームページからご確認ください。(スタッフ)

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