令和7年12月3日(水)、末木文美士先生による講座「仏教哲学再考②−『大乗起信論』を手掛かりにⅤ−」の第19回目が開催された。今回は、前回の講義を補足した内容であった。

はじめに、『大乗起信論』(以下『起信論』)と『釈摩訶衍論』(以下『釈論』)の系譜の中で澄観・宗密の華厳禅の流れに位置する「永明延寿(中国禅僧)」に焦点をあて、その大著『宗鏡録(すぎょうろく)』百巻を取り上げ、『釈論』の影響を大きくうけているわけではないが、それを基礎として『起信論』を解釈して新しい禅宗の流れをつくり出そうとしており、円爾弁円・癡兀大慧がその延長線上に連なることを説明された(千葉正「『宗鏡録』と『釈摩訶衍論』」、駒大大学院仏教学研究年報27、1994、参考)。

続けて、最澄は『釈論』を偽書として採用せず、湛然の「随縁真如説」を中核とする顕教的理論であったが、安然は最澄の偽書説を継承しつつも、空海と最澄を結びつけ、真如論を密教化して用いていることを指摘された。さらに、最澄『守護国界章』の「覚前の実仏」ついて、「覚った状態で現前に見る実仏」(大竹晋『現代語訳最澄全集』3、参考)と解釈した方が妥当であることを示された。

最後に、駒場祭での講演会(「死者たちとともに」)の発表を聴講者に解説して下さり、加えて後日開催される京都大学のシンポジウムの報告を次回行うことを約束され、講義終了となった。

次回の開催は1月7日を予定しております。末木先生の講義は、以前の復習を兼ねて進んでいくため、新規聴講でもまったく問題ありません。また、先生の最先端な知識を拝聴できる貴重な機会となっております。皆様の聴講申し込みをお待ちしております。なお、本講座はリモート開催となっており、講義動画も受講者に配信し、期間内であれば何度でも見ることが可能です。詳細につきましては、「法華コモンズ」ホームページからご確認ください。来年もどうぞよろしくお願い致します。(スタッフ)

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