令和7年10月8日(水)、末木文美士先生による講座「仏教哲学再考②−『大乗起信論』を手掛かりにⅤ−」の第17回目が開催された。今回は、今までの復習とこれからの見通しを確認する内容となった。
はじめに、『大乗起信論』(以下『起信論』)から法蔵『大乗起信論義記』へ、そこから澄観・湛然・『釈摩訶衍論』(以下『釈論』)に展開する全体の見通しを確認した。
続けて、『起信論』は真如と生滅の相対概念であったが、法蔵は真如の一元化(随縁・不変真如)を図り、さらに『釈論』に至ると無因無果である「不二摩訶衍」をたて、「基体を超えた絶対」(神秘主義)を頂点として『起信論』を超えたことを説明された。そして、日本密教の展開として、空海の「不二摩訶衍」の言語化(法身説法、絶対の世界の断絶)と、安然の「不二摩訶衍=真如」とする一元論(絶対的世界と現象的世界をつなげる)について解説し、加えて「覚鑁の五輪説(即身成仏の実践的到達)と本覚思想(現象世界の絶対化)が今までの仏教思想とは別ルートの思想ではないか」と指摘された。
最後に、補論として、中世仏教の政治思想として、王法仏法相依論の立場である栄西『日本仏法中興願文』・貞慶等『興福寺奏状』と、仏法優越論の立場である道元『正法眼蔵』・親鸞『教行信証』、『皇太子聖徳奉讃』・日蓮『立正安国論』について詳細に解説され、講義終了となった。
次回の開催は11月を予定しております。いよいよ日本密教、特に安然に焦点をあてた講義になります。末木先生の講義は、以前の復習を兼ねて進んでいくため、新規聴講でもまったく問題ありません。また、先生の最先端な知識を拝聴できる貴重な機会となっております。皆様の聴講申し込みをお待ちしております。なお、本講座はリモート開催となっており、講義動画も受講者に配信し、期間内であれば何度でも見ることが可能です。詳細につきましては、「法華コモンズ」ホームページからご確認ください。(スタッフ)