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令和7年4月15日(火曜)午後18時30分~、菊地大樹先生による連続講座「歴史から考える日本仏教⑫中世社会と寺社の諸相」の第1講「中世寺院の成立―権門寺社と荘園制」が、オンライン配信により行われました。

はじめに、本講座の目的について菊地先生は、従来の日本宗教史研究においては、各教団の祖師の伝記と教理・思想に研究が集中していたため、いわゆる法然・親鸞・道元・日蓮など鎌倉新仏教の祖師達に注目が集まっていた。しかし、黒田俊雄の顕密体制論の提唱により、旧仏教に光が当てられることによって権門寺院の研究が進み、祖師の教理・思想の背景には、それを支える寺院組織や宗教制度が存在していたことが浮き彫りとなった。そのような国家や権門寺社の組織・制度の研究を深めることにより、教理・組織それぞれの方面からの新しい見方や双方向的な新たな発見がある、と述べられました。

第一回目となる本講座では、中世社会における寺社の役割や、顕密体制下における古代寺院の組織などについて、特に権門寺院として強大な権力を誇った東大寺にスポットを当てて解説をしていただきました。

日本全国に荘園を有する荘園領主である東大寺が、国家の定めた律令制度のもとでどのような経済活動を行ったのか。東大寺は古代寺院から中世寺院へと転換していく過程において、荘園経営のみならず金融などのさまざまな手段を講じて財源を確保することにより、中世における権門寺院への道を開拓していった。次に、東大寺内の組織について、寺内にはさまざまな組織が存在し、国家から財産や文書の管理をするよう任命された官僧や、教学に専念する学侶、修行者の集団である堂衆など、立場の異なる僧侶たちによって寺院経営が進められていたのである。菊地先生は、東大寺が国の定めた律令制度のもとで、古代から中世にかけてどのように展開していったのか、さまざまな資料をもとに詳細に説明されました。

菊地先生は、多くの資料や先行研究を引用し、先生の卓越した知見を織り交ぜながら、懇切丁寧にご説明をしてくださいました。講義終了後は多くの聴講者から質問があり、一つ一つの質問に丁寧にお答えくださいました。(スタッフ)

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