令和7年1月8日(水)、末木文美士先生による講座「仏教哲学再考②−『大乗起信論』を手掛かりにⅡ−」の第12回目が開催された。今回の講義は、「『釈摩訶衍論』の識論と真如・無明論」を主題とした内容であった。
はじめに、『釈摩訶衍論』(以下、『釈論』)の重要なポイントについて、「『起信論』の如来蔵縁起は東アジアの基礎とされているが、『釈論』は真如を中心とする真如論である。無明の位置づけが曖昧な『起信論』に対し、『釈論』では無明の問題を取り上げている」と指摘された。続いて、『起信論』から法蔵(随縁・不変真如)へ、そこから澄観(華厳)・湛然(天台)・『釈論』への展開を示して、日本の仏教哲学はインド仏教の空思想(否定)を根本としているのではなく、真如説(肯定)に基づいていることを解説された。
次に、『釈論』の識論は従来の八識・九識説を十識説へと昇華させていることを確認して、心を分析する個の識(八識・普遍・理性的)から、個を超えた心の奥底にある一なるもの(真如・通底・身体的)との関わり方へと転換していることを説明された。
最後に、『釈論』は真如も無明も「一心本法」を根拠に持つ対等なものとしていること、真如(本覚)と無明は一体性(同体同相義)と個別性(異体異相義)の両方の様相(月の譬喩・闇の譬喩)を持つことを解説され、講義終了となった。
本講座は引き続き4月に再開される予定です。次回からは空海、安然といった日本仏教に焦点をあてた講義となるため、末木先生の最先端な知識を拝聴できる貴重な機会になることは確実です。先生は聴講者に対し、分かりやすく解説して下さいます。新規聴講も問題ありません。皆様の聴講申し込みをお待ちしております。なお、本講座はリモート開催となっており、講義動画も受講者に配信し、期間内であれば何度でも見ることが可能です。詳細につきましては、「法華コモンズ」ホームページからご確認ください。(スタッフ)