令和6年7月3日(水)、末木文美士先生による講座「仏教哲学再考②−『大乗起信論』を手掛かりにⅡ−」が開催された。八回目となる講義では、天台における『起信論』を主題とした内容であった。
はじめに、真如を「随縁」と「不変」の二つに分ける考え方は、日本天台で重要視されて、最澄は徳一との論争で「隨縁真如」を積極的に使うが、その考え方は『起信論』には見られず、法蔵の『起信論義記』で発展した考えであることを確認した。その特徴について、「本来阿頼耶識(心生滅)の展開の中では「本覚」「不覚」「始覚」の問題が取り上げられているのだが、法蔵は「真如」と「無明」の問題として捉えている」、「真如と無明を対極的に捉えて、「真如」に対しての「無明」の側で真如門と生滅門が流動化しており、迷いと悟りレベルの問題となっている」と説明された。さらに、智顗には「随縁」の語は見られるが、「不変」と一対としての真如論として使用しておらず、湛然が無情仏性の問題を取り上げる時には、「随縁・不変」の思想が見られることを示された。
次に、随縁真如論の暫定的なまとめとして、四つの解釈(①現象界に働きかける真如、②生滅界の奥なる真理としての真如、③生成界の根源としての真如、④生滅界の内に働く真如)を提示された。そして『起信論』は通別円に通ずるも、法蔵の解釈は別教であると主張する四明知礼の「別理随縁」について詳細に解説されて、講義終了となった。
令和6年度前期講座は今回で終了となりますが、引き続き後期講座が開催されます。末木先生は聴講者に対し、分かりやすく解説して下さいます。新規聴講も問題ありません。皆様の聴講申し込みをお待ちしております。なお、本講座はリモート開催となっており、講義動画も受講者に配信し、期間内であれば何度でも見ることが可能です。詳細につきましては、「法華コモンズ」ホームページからご確認ください。(スタッフ)