集中講義「『日蓮遺文解題集成』の解説(二)」講座報告

集中講義「『日蓮遺文解題集成』の解説(二)」講座報告
2024年6月15日 commons

令和6年6月15日(土)午後1時30分~、山上弘道氏による「『日蓮遺文解題集成』の解説(二)」の一日講座が、対面とオンライン配信による、ハイブリッド形式で行われた。

本年4月27日に行われた第一回講座では、日蓮聖人が書かれた真蹟遺文を中心に、遺文の基本的な書誌情報を中心に詳細な説明をしていただいた。二回目となる本講座では、真偽未決遺文30編に加えて、山上氏が偽撰遺文であると認定した遺文145編について、それぞれ詳しく解説をしていただいた。まずは、真偽未決遺文・偽撰遺文を合わせて175編にも上ることに改めて驚いた次第である。本編の解説に先立ち山上氏は、「日蓮偽撰遺文学」の必要性を力説し、偽撰遺文が作成された背景や思想などについて研究することの重要性を説かれた。

山上氏は、日蓮偽撰遺文を分類分けして、『立正観抄』、『三世諸仏総勘文教相廃立』の各遺文を中心として成立したであろう偽撰遺文、円明日澄の周辺で作成されたであろう偽撰遺文、日興門流の周辺で成立したであろう偽撰遺文、についてそれぞれ諸資料を紹介しながらご説明くださった。これらの詳細は『興風』所載の山上氏の玉稿に論じられているが、ご自身の口から直接ご教示いただける貴重な機会であり、聴講者は山上氏の説明にうなずきながら熱心に耳を傾けていた。

日蓮遺文の真撰・偽撰をめぐっては、現在でも激しい論戦が繰り広げられている。日蓮の真撰遺文が発見されれば一件落着となるが、真撰遺文が発見されない以上は真撰説と偽撰説はどちらも仮説であり、仮説→反証の繰り返しにより日蓮遺文の真偽論は深化すると愚考する。

山上氏は『日蓮遺文解題集成』を真偽問題、系年の問題を議論するたたき台となれば、と仰っている。本書は今後日蓮遺文を研究するうえで座右の書とすべき一書である。(スタッフ)