講座「仏教哲学再考②―『大乗起信論』を手掛かりにⅡー」第2講 講義報告

講座「仏教哲学再考②―『大乗起信論』を手掛かりにⅡー」第2講 講義報告
2024年5月8日 commons

令和6年5月8日(水)、末木文美士先生による講座「仏教哲学再考②−『大乗起信論』を手掛かりにⅡ−」が開催された。六回目となる講義では、華厳と天台(四明知礼)の教学を結びつけた鳳潭説を原点として、『起信論』の位置付けを確認する内容であった。

はじめに、鳳潭は文献学的な面が強いことに加え、法蔵の縁起説を正統とし、澄観と宗密の唯心論(「一心」を根源に置く)を否定して、『起信論』を大乗終教に位置付けていることを説明した。しかし、「法蔵は確かに『華厳五教章』では『起信論』を大乗終教に位置付けているが、後に著した『起信論義記』では如来蔵縁起宗(四宗判)としており、優れた教えとしている所もある。また、澄観から宗密に至る過程でも法蔵の五教十宗判を批判しているわけではない(宗密の著作による)」として、鳳潭説への疑問も指摘した。

そして、資料の『関西大学東西学術研究所紀要』(31巻)に掲載された「『大乗起信論義記』(国訳および注)」を読解していき、法蔵が「真心」を根本において『起信論』を解釈していることを示し、その理由として、法蔵の『華厳五教章』で説く五教十宗判では玄奘の唯識説が含まれておらず、『起信論義記』では唯識説を新たに教判に取り入れ、それに対抗する形で「真心」を根本に位置付けたと解説された。最後に、教判論から見ていくために、資料の『華厳五教章』の解説文を参考にして、小乗教・大乗始教・大乗終教・頓教・円教の関連を説明されて、講義終了となった。

今回の講義によって、法蔵が『華厳五教章』で説いた五教十宗判では玄裝の唯識説の位置付けが明確ではなく、唯識説に対抗するために『起信論義記』で従来の『起信論』の理解(心真如と心生滅)を一歩進めた如来蔵縁起説(如来蔵=仏性)を提示し、そこに法蔵の『起信論』に対する再評価が見られることが明らかになった。

次回は6月12日(水)となります。末木先生は聴講者に対し、分かりやすく解説して下さいます。新規聴講も問題ありません。皆様の聴講申し込みをお待ちしております。なお、本講座はリモート開催となっており、講義動画も受講者に配信し、期間内であれば何度でも見ることが可能です。詳細につきましては、「法華コモンズ」ホームページからご確認ください。(スタッフ)