令和6年2月17日(土)午後4時30分~、新宿・常圓寺祖師堂地階ホールを対面講義の会場として、立正大学非常勤講師・日蓮教学研究所研究員の神田大輝先生(博士〈文学〉)を講師にお招きし、Zoomオンライン聴講もできるハイブリッドで、法華仏教講座第5回「広蔵院日辰の教学思想とその基盤」の講義が執り行われた。
神田先生は、近時、大著『広蔵院日辰教学の研究』(山喜房仏書林)を上梓された斯界期待の研究者である。立正大学でも多くの専門科目を担当され、教え子も多い。
広蔵院日辰(1508-1576)は、日蓮宗教学史上、戦国時代を代表する学僧であり、日尊門流の教学大成者として著名である。
今回の講義では、天文期の研鑽活動、特に教義書の書写蒐集、及びそれをなし得た他門流との人的交流に注目され、またその取材から後年の著述へと繋がる問題意識の連続性を踏まえつつ、日辰の宗義探究から発揮までの軌跡を丁寧に辿られた。
日辰は、享禄3年(1530、23 歳) に西山本門寺の日心より「造仏読誦堕獄の法門」を伝授され教学の拠ろとしたが、天文6年(1537、30 歳)にその改悔から、他門の教義書の書写蒐集や一切経の閲覧等の研鑽活動期に入る。神田先生は、先ずその様相を詳細に論じられた。
次いで、大黒喜道師が指摘された「機内勝劣派グループ」(日郷門流・日隆門流・日尊門流・日真門流の本迹勝劣義を共有する持続的なグループ)の存在に着眼しながら、日辰の教学確立期における他門教義書(『十三問答抄』『惣釈』『法華宗本門弘経抄』『法華論科註』等)の書写蒐集活動や、それに基づく教学研鑽の様相を細かに論じてくださった。
また、論中、「護持此経論」の論争の真の争点など、教学史上の様々な重要問題についても所見を提示され、大変貴重な2時間となった。
今回の配布レジュメはA4紙33枚かという膨大な分量であった。
日蓮門下の教学の歴史を考究する上で極めて重要な内容であり、コモンズで本講義を執り行わせて頂けた意義は甚大である。
講義終了後は、聴講者一同から大変大きな拍手が送られた。(スタッフ)