集中講座「宗教と公共空間」講座報告

集中講座「宗教と公共空間」講座報告
2023年8月5日 commons

令和5年8月5日(土)午後1時半より、常円寺祖師堂地階ホールを会場に40名程の参加者を集めて、集中講座「宗教と公共空間」が対面とオンラインで開催されました。この講座は、昨年よりの「ウクライナ侵攻」と安倍元総理の銃殺事件で再浮上した「統一教会問題」の衝撃的を受けて企画され、タイトルを「宗教と公共空間」として、多様性と多元性が叫ばれる現代社会での宗教的理想のあり方を考える講座としました。講師には、宗教と公共性を統一教会問題から論ずる櫻井義秀先生(宗教社会学者)、イスラーム教徒の立場から論ずる中田考先生(イスラー法学者)、そして立正安国の問題として論ずる上杉清文先生(日蓮宗僧侶)を招き、国内的に、世界的に、また実践的な視点からこの問題を検討して頂きました。

第1講の櫻井先生は、冒頭から日本人の宗教的規範性の不足を嘆き、その歴史認識の貧困さにも言及して、文鮮明の教説(植民地支配での「恨」と、その贖罪を日本人信者に求める。アダム国・韓国に、エバ国・日本が奉仕する)からわかるように、統一教会問題とは日韓のポストコロニアルな問題であり、しかしこのことを日本の保守もリベラルも認識できていない、と指摘します。
そして解決策として、①」「解散命令の請求」は政治家との癒着を断ち新規信者の入信を防ぐため必要であり、また②宗教二世問題については、「信仰と自由の関係」そして創価学会―公明党のあり方も含めた「政治と宗教の関係」を問い直すべきとして、一人一人がカルトの勧誘や教説に毅然として対応できる「宗教リテラシーと歴史認識」の勉強の必要性を強調されました。

第2講の中田先生は、神の唯一性に立つイスラーム信者の視点から、現代は「終末とニヒリズムの世紀」であるとして、神以外の全ては偶像、科学主義も世俗主義も民主主義も民族主義も偶像崇拝である、とみます。そして現代世界とは、全世界が西欧文明の文化植民地化で覆われ、領域国民国家システムを前提とし、その主神は国家(リヴァイアサン)であり、陪神は金銭(マモンの神)、祭祀は科学者とのその眷属(政治・軍事家・資本家)だとします。その世界の中で、「カリフ制」とは全てのイスラームの教えを実現する要であり、カリフ制不在の現代では自称他称のイスラームは全て(自分も含めて)偽物となると言い切り、自分には何もなく、ただ神のみが力をもつ、と信仰的信念を述べられました。

第三講の上杉先生は、『「立正安国論」が日蓮宗からも公的なものが刊行されておらず、公共空間でも認知されていないとして、その説明から始めました。そして、日蓮宗が理想の根拠とする『立正安国論』というテキストをどのように読むかを問題にして、テキスト論を展開。その実現にあたっては、カントの『純粋理性批判』から、構成的原理(理性に基づき、社会を具体的に変えていく理念)と、統整的原理(実現せずとも現状を批判し続けて変えていく理念)を比較検討。そして「人間の理想は統整的原理を根拠としている」というカントの言葉から、「立正安国」は永遠に生成し続ける追求すべき理想として、その実践例として「経産省前脱原発テントひろば」で自ら行う日本祈祷団四十七士( JKS47 )の「諌暁」活動を挙げられました。
その後、講師同士が質疑応答する「鼎談」に入り、受講者からの質問用紙を読み上げての質疑応答を行いました。質疑では、予定時間を三〇分以上越えて、開始から五時間半をかけての講座を終了しました。講師の先生方、また受講の皆さまには、熱く感謝申し上げます。(担当スタッフ)