令和5年2月11日(土)、末木文美士先生による連続講座「仏教哲学再考―『八宗綱要』を手掛かりに⑤」後期第4回目が開催されました。長期にわたった講義もいよいよ最終回となりました。今回は、日本中世の仏教思想の一潮流である本覚思想に焦点を当て、「本覚思想と日蓮遺文」をテーマに講義が行われました。
はじめに、「如来蔵・本覚思想とその批判」では、江戸中期の学僧である鳳潭を取り上げました。鳳潭の教学は、法蔵の華厳学を中心としており、時代の開きがある澄観と宗密の教学を批判していることに加え、『大乗起信論』を円教に至らない大乗実教・天台別教としているが、円教の前段階として評価している面もあり、そこに二重性がみられる。しかし、鳳潭の『大乗起信論』の位置づけをもとにして、あらたに『起信論』を読み直していくことができるのではないか、と解説されました。
次に、「本覚思想をめぐって」では、刊行準備中の辞典用原稿を公開してくださり、その資料をもとに「本覚思想」について説明されました。
続いて、今回の講座のメインテーマでもある「日蓮遺文」について見解を示されました。現在、日蓮遺文は日蓮A(真撰)・日蓮B(真偽未決)・日蓮C(偽書)に分けられるが、日蓮Bから日蓮Cへの移行は、仏教が宗派化して閉鎖された集団性と正統と異端の切り分けが行われた中世後期(14~15世紀)の状況に合致するのではないか、と指摘されました。
最後に、『御義口伝』と「凡夫本仏論」を取り上げ、講義終了となりました。
日本仏教の様々な問題点を浮き彫りし、さらには質疑応答にも的確に答えていただいた末木先生には、聴講者一同、心より感謝申し上げます。また、当学林での末木先生の新たな講座は、本年十月からの後期講座を予定しておりますが、その内容は現在検討中です。改めてご案内いたしますので、楽しみにしてお待ちください。新講座も充実した内容となることは確実です。皆様の聴講申し込みをお待ちしております。なお、本講座はリモート開催となっており、講義動画も受講者に配信し、期間内であれば何度でも見ることが可能です。詳細につきましては、「法華コモンズ」ホームページからご確認ください。(スタッフ)