講座「仏教哲学再考―『八宗綱要』を手掛かりに」⑤第3講 講義報告

講座「仏教哲学再考―『八宗綱要』を手掛かりに」⑤第3講 講義報告
2023年1月7日 commons

令和5年1月7日(土)、末木文美士先生による連続講座「仏教哲学再考―『八宗綱要』を手掛かりに⑤」後期第3回目が開催されました。前回の講義でテキスト『八宗綱要』(講談社学術文庫)は読了となりましたが、今まで学んだ鎌倉期の学僧である凝然の日本仏教概論を踏まえて、「鎌倉仏教の見直し」をテーマに講義が行われました。

はじめに、鎌倉新仏教中心論について論じられ、戦後の近代合理主義に基づく歴史学者の進歩史観により旧仏教と対比して提唱され、主流となったが、黒田俊雄の顕密体制論によって、歴史的な実態に合わずに中心よりもむしろ異端であったと批判され、現代においては終焉をむかえた、と指摘されました。

次に、鎌倉仏教を広く中世仏教の枠内でとらえ、その思想的な源泉として、仏教によって国家を導く平安初期(鎮護国家)から、個人や在家を中心とした平安中期(仏教の私化)への変容を確認し、平家によって焼討にあった南都の復興運動を開始した後白河法皇と重源が、新たな中世仏教の最初の出発点であった、と示されました。

続いて、鎌倉期にいたる展開として、法然と同時代人となる栄西の密教に焦点をあて、教主論(自性身説法)・身体論(理智冥合を男女合一の譬喩で説明)・顕密優劣論・易行化(陀羅尼)について解説されました。

最後に、鎌倉期の仏教の展開を三期に分け、その中で日蓮と同じ第三期に入る八宗兼学の無住に焦点をあてました。諸行併修を理論づけた著作である『聖財集』を取り上げ、四句分別を応用して変形することで、多元的な価値の可能性を理論づけている、日本における四句分別の展開のひとつとして注目に値すると指摘され、講義終了となりました。

次回はいよいよ最終回となり、テーマは「本覚思想と日蓮教学」です。教学委員の花野先生も聴講されており、両先生の最前線の見解が聴講できると思います。新規聴講も充分について行けますので、皆様の聴講申し込みをお待ちしております。なお、本講座はリモート開催となっており、講義動画も受講者に配信し、期間内であれば何度でも見ることが可能です。詳細につきましては、「法華コモンズ」ホームページからご確認ください。本年もよろしくお願い申し上げます。(スタッフ)