「法華仏教講座」第2回 「最澄・徳一論争と、その後の展開」報告

「法華仏教講座」第2回 「最澄・徳一論争と、その後の展開」報告
2022年5月7日 commons

令和4年5月7日(土)午後4時30分~、令和4年度前期「法華仏教講座」の第2回目が、Zoomを用いた実況配信型講義として執り行われた。
今回のご講師としてお招き申し上げたのは師茂樹先生。「最澄・徳一論争と、その後の展開」の講題で2時間のご講義を賜った。
周知の通り、師先生は、昨年上梓された『最澄と徳一 仏教史上最大の対決』(岩波新書)で、日本仏教史上における重要な一コマの“解像度”を極めて鮮明に描写され、仏教研究界の先導役として大変注目されている。当日は、Zoom開催であるにも関わらず、仏教研究の専門家を含む、多くの聴講者の参加がみられた。先生の温厚誠実なお人柄や明快な語り口に誘われるかのごとく、質疑応答まで含め頗る盛会となった。
師先生は、三一(一三)権実論争として有名な平安時代初期の最澄・徳一論争が、単純な二項対立の論争ではなく、その前提として、唐・新羅、あるいは日本内の当時の複雑な人間関係・師弟関係、多様な歴史的背景・ネットワークに注目する必要があること。それらを念頭に置き、先行する三論・法相の空有の論争から最澄・徳一の論争に収斂されていく様を解析してこそ正確に読み解ける論争であることを、分かり易く解き明かしてくださった。
また、その間、「唐決」の問題、延暦年間に何度も発された、三論・法相の争いを調停せんとする詔と最澄との関わり、最澄・徳一両者の「因明(宗・因・喩)」への視線、最澄の「共許」重視など、様々なキーが存することを明らかにされ、さらに、背景にある、諸宗併存体制のバックボーンの提示という最澄の視線など、最澄の著作に関心をもつ聴講者を大いに啓蒙してくださった。
さらに、講義では、当時の東国仏教における徳一の立ち位置にあらためて注目されるなど、今後の日本仏教史研究の一側面の解明に繋がる貴重な所見を、惜しみなく披露してくださった。
今回の師先生のご講義は、日蓮聖人研究の面からも今後の大きな前進に繋がる、極めて意義深いものであった。(スタッフ)