令和4年2月5日(土)午後4時30分から、末木文美士先生による連続講座「仏教哲学再考―『八宗綱要』を手掛かりに③」後期第4回目が開催され、テキスト356頁、第七章「華厳宗」からの講義となりなした。
はじめに、『岩波仏教辞典』より『華厳経』と「華厳宗」の解説部分を引用し、末木先生独自の視点からより詳しく解説が加えられました。
『華厳経』の解説部分では、題名の意味、「入法界品」「十地経」「性起経」が三世紀頃に中央アジアで集成されて成立したとみる説、東大寺の盧舎那仏は華厳からではなく『梵網経』による説、『華厳経』があまり受けいれられなかった理由、などを説明されました。
「華厳宗」の解説部分では、五祖説(杜順・智儼・法蔵・澄観・宗密)の法蔵と澄観の年代に開きがあることについて、両者の間には教学の大きな変革があったことは間違いない、と指摘されました。さらに、日本伝来について、元暁と法蔵の影響が強い華厳教学が、新羅に留学していた審祥によって伝えられ、凝然もそれに影響を受けたことを明らかにされました。
これらを前置きしたうえでテキストに入り、「華厳の宗名」「華厳経の種類と翻訳」「華厳宗の歴史と祖師」「五教十宗の教判」を読み解いていきました。
次回、令和4年度前期講座において第七章「華厳宗」を深く掘り下げた講義を予定しております。法蔵の『華厳五教章』、心と世界の相関(『華厳経』の唯心論の展開、法蔵から澄観・宗密へ)など、より具体的な教理に加え、末木先生の哲学的視点による解説を聴講することができます。新年度も充実した講義になることは間違いありません。本講座は、日本仏教を再認識するだけでなく、毎回高度な質問が飛び交い、大変参考になる講義でございます。皆様、聴講の申し込みお待ちしております。なお、本講座はリモート開催となっており、講義動画も受講者に配信し、期間内であれば何度でもみることが可能です。詳細につきましては、「法華コモンズ」ホームページからご確認ください。(スタッフ)