2021年2月6日(土)、今年度としましては最終講義にあたる、末木文美士先生による「仏教哲学再考―『八宗綱要』を手掛かりに」第4回目が開催されました。テキスト第3章「律宗」の内容を深化させた講義となりました。
凝然自身が南都の律僧であった時代も、戒律の見直し運動がおこり、度々日本仏教の歴史の中で問題となっていた戒律の問題を軸として、末木先生の客観的視点から4つの項目(①大乗戒の原点、②最澄の大乗戒とその原点、③最澄以後の展開、④戒の変容)に分け、考察していきました。
①大乗戒の原点では、玄奘訳『瑜伽師地論』に説かれる三聚浄戒(律儀戒・摂善法戒・饒益有情戒)を読み、菩薩としての精神的な側面が重要されていることを解説されました。さらに、『梵網経』に説かれる「梵網戒」が、出家と在家に共通してあたえられていたことを示されたのち、「十重禁戒」と「四十八軽戒」を詳細に教示されました。
②最澄の大乗戒とその原点では、『山家学生式』をとりあげ、最澄が理想とする国のありかた(菩薩精神の発揮)を明かす六条式と、なぜ大乗戒を採用したかを明かす四条式について、原文を引いて解説されました。
③最澄以後の展開では、大乗戒壇が認められてきた過程を記録した光定の『伝述一心戒文』をあげ、達磨が祖となっていること、さらには聖徳太子・慧思・達磨が説話でからんでいるところに着目したあと、円仁・安然時代に、戒が精神化していくという系譜を見ていきました。そして、法然から中世の円頓戒へと展開し、日蓮の三大秘法にいたる流れにも言及されました。
④戒の変容では、日本における戒律が衰退の一途をたどったわけではなく、復興運動とともにあったこと、真俗一貫と化した日本仏教が、グローバルスタンダードの逸脱と回復を繰り返していたことを示されたのち、近世の僧侶自由令・戸籍制度が与えた日本仏教教団への影響を解説され、講義終了となりました。
令和2年度は全4回の講義でしたが、来年度も続きます。次回は5月8日を予定しております。日本仏教を再認識するには、大変参考になる講義でございます。聴講の申し込みお待ちしております。詳細につきましては、「法華コモンズ」ホームページからご確認ください。(スタッフ)