令和3年1月23日(土)午後4時30分~、村上東俊先生によるご講義がZoomにて開催された。講題は「釈尊の聖地から仏教の足跡を辿る-ルンビニとティラウラコットの最新調査-」。
村上東俊先生は現在、法華宗(陣門流)学林教授〈監事〉・立正大学法華経文化研究所特別研究員・法華仏教研究会編集委員・日本印度学仏教学会評議員などを勤めている。
当日は、法華宗(陣門流)の西山英仁宗務総長、牧野秀成総部長をはじめ宗務院の部長・主事、学林関係者などを含む多くの聴講者にZoom入室いただき大変な盛会となった。
2010年から、ネパールにある釈尊生誕地ルンビニ、並びに釈尊出家の地として知られるカピラ城の有力候補ティラウラコット遺跡の発掘調査が、ユネスコ主導により開始されている。プロジェクトの考古学調査部門は英国ダラム大学のロビン・カニンガム教授とネパール政府考古局前局長コシュ・アチャールヤ氏を中心に、ネパール政府考古局、ルンビニ開発トラスト、トリブバン大学、スターリング大学(英)、ナショナルジオグラフィック(米)、法華宗(陣門流)などが協力している。
村上先生は、今回、現地調査実施の拠点となったシャンティビハールの住職でもあり、調査進展の様子、現時点での調査結果とその意義について詳細かつ正確にご教示くださった。講義では、村上先生のみしか知り得ない細かな情報の数々も語られ、大変有意義なご講義を聴講できたと受講者の多くから感嘆の声が上がっていた。当学林としても、このような機会を設けさせて頂けたことは誠に幸運であり、当学林の歩みにまた一つ大きな実績を積ませて頂けたことに心より感謝申し上げている。
村上先生は、分かり易く、全体を4章に分ける形で話を進めてくださった。
すなわち、近時のルンビニ(Lumbini)における考古学調査(2010~2013年)、ティラウラコット(Tilaurakot)における考古学調査(2014~2020年)、Greater Lumbini area(GLA)における仏教遺跡群の調査(2015~2018年)、そして「釈尊の聖地から仏教の足跡を辿る-まとめと今後の課題-」である。
以上の詳細を、Zoom上でPowerPoint機能を見事に駆使されながら、明快にご講義いただいた。
今、先生が作成されたレジュメのまとめに即して講義内容を少しく紹介すると、
・ルンビニ・ティラウラコット調査を通して、南伝説(544/543BCE.)が仏滅年代として支持され、ルンビニにおける釈尊降誕の最初期モニュメントが中央に聖樹(菩提樹)を祀り周囲を木材フェンスで囲った祠堂(Timber Shrine)と結論されること。仏教徒によるルンビニへの礼拝巡礼がこの祠堂造営された釈尊入滅後に始まったと推測されること。また、今般の大規模な磁気調査は、仏教徒によるルンビニ巡礼が、クシャーン期(1-3CE.)には、ドハーニやカルマがルンビニからティラウラコットやクダン、サガラハワ、アラウラコットへ訪れる際の中継地であったと推測しており、法顕(5CE.)や玄奘(7CE.)が訪れた際には、仏教衰退・遺跡荒廃の様子が伝えられるも、それ以前には四大仏跡だけではなく釈尊の故郷カピラヴァストゥに思いを馳せた人々がゆかりの地を巡礼していたと考えられることが報告された。
・また、今回のティラウラコットの発掘調査では、法顕や玄奘の記録と符合する宮殿や宮殿遺跡の上に造営された伽藍、更には城外東で僧院遺跡が新たに発見された。それは、ティラウラコットやGLAの大規模な磁気調査から、ティラウラコット遺跡が法顕と玄奘が訪れた釈尊出家の地カピラ城であることを確信させる画期的な成果であったことが報告された。
・それらを承けて、最後に、村上先生が今後検討を見据えている貴重な課題の数々が語られた。
プレゼンテーションのお手本となる、充実した、素晴らしい名講義であった。(スタッフ)