2021年1月9日(土)、末木文美士先生による「仏教哲学再考―『八宗綱要』を手掛かりに」第3回目が開催されました。テキスト130頁、第3章「律宗」からです。
はじめに、戒律を遵守するという点において他宗(南都六宗)と通じる性質をもっていた日本の律宗が、最澄の「円頓戒(大乗戒)」への推移によって衰退してしまったことを解説されました。そして、在家と出家の具足戒を近づけるという日本独特の戒律となってしまった日本の大乗仏教に比べて、在家と出家の具足戒をはっきり分けるという特徴をもち、部派仏教教団の戒律をそれぞれ独自に用いている南伝仏教・チベット仏教・中国仏教・韓国仏教について説明し、その違いを比較・検討されました。
次に、仏教教団において重要な構成要素である、三蔵(経蔵・論蔵・律蔵)の一つである律蔵は、過ちが犯されたそのつどにこれを制止する戒律が加えられる「随犯随制」によって形成されていったことを示されました。さらに、仏教教団の分裂(根本分裂・枝末分裂)の原因として、大天の五事や提婆達多の問題などをとりあげながら、戒律の違いによるものではないか、と独自に考察されました。
テキストにはいり、「四分律宗」の解題にあたり、3つの項目(①歴史・②分派・③教義内容)に分け講義が進みました。
①四分律宗の歴史として、インドから中国に伝わった四律(十誦律・四分律・摩訶僧祇律・五分律)と五論(毘尼母論・摩得勒伽論・善見論・薩婆多論・明了論)を説明し、中国では「四分律」が深く根付き、それが日本に伝来したということを読み解いていきました。
②四分律宗の分派として、三宗(法礪・道宣・懐素の三師)をあげ、各々の宗義の解説と、その由来を明らかにされました。
③四分律宗の教義内容として、「四分律(初分・第二分・第三分・第四分)」を詳しく見ていき、「止持戒(五篇に分けた戒法で悪を防ぐ消極的な方法)と作持戒(説戒、授戒などの方法で善を修する積極的な方法)」の二門、比丘(二五〇戒)・比丘尼(三四八戒)の具足戒、「在家戒と出家戒」を分け隔てていること、道宣の解釈であり「四分律」に唯識円教の教えを具えるとする「化制二教と三宗」の教判論、三聚浄戒(摂律儀戒・摂善法戒・摂衆生戒)の摂律儀戒のなかに「四分律(小乗戒)」を包含することで大乗の立場を明かす教判論、などを詳細に解説され、講義終了となりました。
ご挨拶が遅れましたが、本年もよろしくお願いいたします。次回は、末木先生の今年度最終講義となります。日本仏教を再考していくこの講義は、法華コモンズでしか味わえない、貴重な講義だと思います。日程が合わない方でも受講申し込みいただければ、動画配信を行っておりますので、よろしくお願いいたします。詳細につきましては、「法華コモンズ」ホームページからご確認ください。(スタッフ)