講座「日蓮と蒙古襲来の時代」第1講オンライン講座

講座「日蓮と蒙古襲来の時代」第1講オンライン講座
2020年10月20日 commons

2020年10月20日(火)午後6時30分より、菊地先生の2020年度後期講座【歴史から考える日本仏教⑥】〈日蓮と蒙古襲来の時代〉第1講「13世紀の日本列島」が行われました。新型コロナウイルスの感染予防のため、前期講座に引き続きZoomによる動画を生配信し、受講生の方々が各自オンラインで受講しました。

菊地先生は「蒙古襲来」について、前期講座で取り上げた「承久の乱」と繋がりの良いテーマであり、承久の乱以上に広がりのあるテーマである。また日蓮の教義は蒙古襲来を抜きには理解できない。その本質を深く理解するためには一回射程を広く取って、13世紀の日本や東アジアの一般的情勢をしっかり理解しておく必要がある、とご説明くださいました。

第1講となる本講座では、はじめに蒙古襲来に関する先行研究、また前近代、近代における「元寇史観」について確認。次に、蒙古襲来前後に於ける日本と朝鮮の状況についてご説明いただきました。以下、内容について要点を絞りご紹介致します。

はじめに―「元寇史観」を越えていけ―

近代における「元寇史観」は、イデオロギー的にぬり固められてしまった(「神風」という言葉など)。ラディカルな研究者として知られる海津一朗氏は、19世紀後半から形成された日本主義・国粋主義によって〈歪められた〉「元寇史観」を乗り越えるのは、予想以上に困難、と指摘している。菊地先生は、これまでの研究史を慎重に踏まえた上で、「元寇史観」について新たに見直していく必要がある、と指摘。

1.後嵯峨院制と執権政治

承久の乱を乗り切った北条義時の没後、執権を継承した嫡男泰時は、貞永元年(1232)幕府法の根本となる御成敗式目を制定。御家人の合議制と法にもとづく執権政治を開始する。その後寛元4年(1246)執権を継承した時頼は反対勢力を次々と粛清、得宗権力を強化する。一方、京都では四条天皇が夭折し、鎌倉幕府により土御門院皇子(後嵯峨天皇)が即位。幕府の意向により即位した後嵯峨天皇は、幕府と親密な院政を敷く。

2.得宗専制・蒙古襲来と在地社会の変容

その後も時頼は反得宗勢力を次々と滅ぼしていく。文永3年(1266)宗尊親王を追放、同9年(1272)二月、名越時章・教時が鎌倉にて、六波羅探題時輔が京都にて粛清された(二月騒動)。一方で、北条氏と縁戚関係にあり、実務官僚である安達泰盛が抬頭する。泰盛は北条時宗の死後、外祖父として貞時を支えながら一年半あまりの間に改革的な政策を次々に打ち出した。この政策により御家人勢力の復活による幕府の安定を図ったが、御内人勢力から反発を招き、弘安8年(1285)平頼綱により粛清(霜月騒動)。泰盛を粛清した頼綱も、永仁元年(1293)執権貞時により粛清(平禅門の乱)。

3.蒙古襲来への道

文永3年(1266)蒙古は高麗を通じて日本に「詔諭」に赴く。日本と朝鮮は古くから対馬をクッション役として関係を調整していた。同5年(1268)蒙古・高麗の国書が到来。その後1270年、高麗では文臣が蒙古への降伏を決定すると、武臣政権の中枢を担った三別抄が抵抗。翌年、三別抄は日本に求兵・兵糧を求め、モンゴルの脅威への共闘を呼びかけたが、朝鮮半島の様子を正確に把握していない日本(幕府)はこれを無視。幕府は異国警護番役を催し、九州に所領を持つ東国の御家人を動員し、異国への警護と同時に領内の悪党を鎮めるよう通達した。

ここで時間が来てしまい、文永の役以後は次回ご説明いただけることになりました。今回ご用意いただいたレジュメには、20もの史料を引用し、加えて皇室・北条家の系図、鎌倉時代の各年表などもご用意くださり、詳細なご説明をいただきました。「蒙古襲来」に関する史料について菊地先生は、元・朝鮮・朝廷・幕府や、それらに翻弄された貴族、動員された武士など、それぞれの立場から残され、かつ断片的。すべての史料を集めて正確に考証し、矛盾する内容を整合的に説明する努力が不可欠、と指摘されました。このような努力の先に、イデオロギー的にぬり固められた「元寇史観」を乗り越える道が開けるのではないかと愚考しつつ、あっという間の充実した二時間の講義が終了しました。

講義終了後、質疑応答が行われ、4名の受講者の方から熱心な質問が寄せられました。菊地先生は、一つ一つの質問に丁寧にお答えくださいました。誠にありがとうございました。

新型コロナウイルス感染の影響により、今回もZoomによる動画配信という形となりました。今後の講座につきましては、新型コロナウイルス感染の状況を鑑みながら、対面あるいは動画配信による講座となります。次回第2講は「蒙古襲来と日蓮」11月17日(火曜)午後6時30分~開講予定です。詳細につきましては「法華コモンズ」ホームページよりご確認ください。(スタッフ)