講座「『法華経』の仏教思想を読む」第4回講座報告

講座「『法華経』の仏教思想を読む」第4回講座報告
2018年7月14日 commons
平成30年7月14日(土)新宿・常円寺にて、松本史朗先生による「『法華経』の仏教思想を読む」第4回「「譬喩品」の読解「火宅譬喩」の解釈」の講座が行われました。
松本先生はまず「譬喩品」中において、仏陀を「大長者」としてなぞらえること自体に、差別的な性格があると思われるとして、ここで用いられている「富んでいる」に対比される「貧しい」”daridra”という差別的な形容詞は、身体的障害に差別的な言葉が多用されている”「譬喩品」末尾の一連の偈”で用いられているが、「方便品」の散文部分には全く用いられておらず後世の付加ではないか、と解説して頂きました。
また、「火宅譬喩」において「大長者」の家に住んでいたのが”100~500人”であるのに対し、「大長者」の子供の数は”5人~20人”であり、彼等だけが”菩薩”であり”菩薩だけを教化する”、”菩薩だけが成仏できる”として”火宅”から救済される、というのが「譬喩品」散文部分の”大乗主義”の実態である(残りの人々は救済されない)、と述べられました。
そのほか、「大長者」が子供たちに与えるとした三種の遊具と、実際に与えられた一種類の遊具(「仮説の三車」と「賜与の一車」)について、『正法華』では「牛の車」とは言われておらず、そこでは”賜与の一車”について「七宝大車」と言われているだけであり、また『修行道地経』では”賜与の一車”は「宝車好乗」と記述されている。『正法華』『修行道地経』の成立の古さを考慮すると、”賜与の一車”は元来「牛の車」であるとは規定されていなかったという想定が成り立つ、と解説して頂きました。
その後も「大乗」”mahayana”の用語を導入した成立時期の想定や、「譬喩品」の成立過程で”賜与の一車”が「牛」と紐づけられるようになった三段階の付加の想定、また後世の編纂者の狙いが「仮説の三車」中の「牛車」を「賜与の一車」とすることと思われる、など多くのお考えを示して頂きました。
次回「『法華経』の仏教思想を読む」第5回は平成30年8月11日(土)となります。多くの皆様のご参集をお待ち申し上げております。(文責:スタッフ)