平成30年1月20日(土)「法華仏教講座」第4回目の講座が行われました。
今回の講師は松森秀幸先生。中国人民哲学院宗教学系で妙楽大師湛然を研究されていた、日本で最も湛然に詳しいといえる先生です。その松森先生に「唐代天台復興運動と湛然」という題で講義をして頂きました。
まず湛然の経歴と思想的な位置づけとして、広く知られている一般的な見解とともに、なぜ天台中興の祖と称されることになったのか、中国の文献を参照しつつ湛然の具体的な活動内容を解説して頂きました。さらに著作の傾向から、天台三大部(「摩訶止観」「法華玄義」「法華文句」)の特別性を強く出すことで、止観と法華経の思想的な結びつきを重視した、天台教学の体系を確立したことを示して頂きました。
次に近年の研究と論争について概観を解説して頂き、その一つとして「五時八教は天台大師智顗が立てた教判ではなく天台教学の綱要として扱うべきではない」という関口真大先生と、「五時八教は智顗にその根源がある」とする佐藤哲英先生の、印度学仏教学会での論争の概要と意見の相違点、および認識が共通した点について示して頂きました。
当時の論争の結果として智顗には五時八教によって教相・教判を述べている箇所はなく、むしろ五味に重点を置いている、「五時八教」の設立自体は智顗よりも後の時代であるとの結論を示して頂きました。天台教学といえばすぐに智顗を連想してしまい、その後の教学の発展と展開に思い至らなかった自分には気が引き締まるような学びでした。
最後に「唐代天台復興運動」という湛然を中心とした中国天台宗の復興運動について、湛然の問題意識と法華経の理解について説明して頂きました。当時は中国各地で法華経重視の道場が建築されていましたが、湛然はそれが智顗の教えから離れた法華経の真意から外れたものとして批判していました。また湛然は中国天台宗が以前と比べて衰退しているという認識のもと、自らの正当性の立証として智顗を師とした「摩訶止観」「法華玄義」「法華文句」に基づいた法華経理解を教学として体系化し、また法華経は八教(蔵教、通教、別教、円教、頓教、漸教、不定教、秘密教)の範疇に収まらない、別格の経典(超八、法華超八、超八醍醐)であるという位置付けを鮮明にしたことを解説して頂きました。
聴講生からの質問による回答では、日本において湛然が引用される理由として湛然の文章は非常に意味が取りづらく、ある意味で自分に引き寄せて使いやすかったのかもしれない、とのコメントと共に中国では日本ほど湛然が引用されていないという、中国と日本における扱いの違いを示して頂きました。
妙楽大師湛然について、教学上の重要性を認識させられるとともに、膨大な学識の一部を開陳して下さった松森先生には感謝に堪えません。誠に有難うございました。次回第5回目の「法華仏教講座」は、2月17日(土)17時から、法華コモンズの教学委員も務める花野充道先生による「日蓮教団分裂の諸相」です。
当日のみの受講(1回3,000円)も随時受け付けておりますので、本HP内の「受講のお申込み」からお申込みください。
多くの皆様のご参集をお待ち申し上げております。(スタッフ)