平成28年6月18日、花野充道先生の第3回目の講義が行われました。
仏教が目指す解脱(成仏)について、初期仏教に説かれる「滅尽定」、『大乗起信論』に説かれる「離言真如」、そして『摩訶止観』に説かれる言語道断・心行所滅の「一念三千」を説明された後、それらと日蓮聖人の唱題成仏論との違いについてご教示いただきました。天台大師の止観が無相行(理観)であるのに対して、日蓮聖人の唱題は有相行(事行)であるから、行としては法然の念仏行に近い、と説明されました。
さらに、天台大師の「一念三千」や「類通三識」の思想について、それらを文献学の立場から解釈すれば智顗自身の思想ではなく弟子の章安大師の思想である、という新説がおこるように、日蓮聖人の場合も文献学の立場から新説が提示される可能性があるから、伝統的な解釈の再検討が必要である、と述べられました。
そして、信仰に基づく伝統的な解釈と、文献学をふまえた批判的な解釈のバランスをどのようにとるのか、その課題を自覚して日蓮聖人の仏教を学んでいただきたい、と結ばれました。
また今回は、アメリカ・プリンストン大学のジャックリーン・ストーン教授が、アメリカにおける日本仏教研究の現状についてお話してくださいました。
次回は、日蓮聖人の本迹論の基礎となる天台大師の本迹論について、『法華文句』の権実釈(約教釈)・本迹釈・観心釈を中心にお話してくださるそうです。皆さまのご聴講をお待ちしています。