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都守基一先生の『日蓮聖人遺文研究』の第5回目の講義が、平成292月25日(土)、新宿・常円寺様で開催されました。今回は10名の受講生が参加されました。

前月の第4回で「『立正安国論』の書誌と内容」が終了し、今回から「『法華取要抄』の書誌と内容」というテーマでの講義がスタートしました。ご承知のとおり、『法華取要抄』(以下「同抄」と略記)は都守先生が一番精力を傾けて研究されてきた御書です。その研究の成果を、一般向けにわかりやすくご講義いただきました。

講義内容は、同抄の概要、同抄述作年代、同抄の草案について、述作された文永11年における宗祖の足どり、述作の動機、同抄の大意、同抄と他の御遺文との関係、等々を2時間かけてご説明くださいました。

受講生として、講義で印象深かった点を以下に列記します。

*同抄は身延入山後に書かれた、書簡ではない論攷としては最初の
御遺文であること。

*『開目抄』では、宗祖はご自身を「法華経の行者」とし、『観心本尊抄』では末法の大導師を「地涌千界」「四大菩薩」という表現をされている。しかし身延入山後の同抄では、特に「上行菩薩」に焦点を当てた表現を用いられていること。

*同抄の草案と思われる『取要抄』、『以一察万抄』と同抄では、「三大秘法」「上行自覚」「叡山の戒壇」「密教に関すること」等のうち、公表を憚って浄書本である同抄には、削除した点がいくつかあること。

*同抄は同時期に書かれた『曾谷入道殿許御書』と、密接な関連のある御書で、「両書とも広・略・要を謳い、妙法五字を導き出す論拠にしていること」、「前者は三大秘法、後者は一大秘法の記述があること」、「前者は富木殿へ、また後者は太田金吾・曾谷入道のお二方宛てと、両書ともに下総の檀越に送られた御書であること」等々。

 

特に『曾谷入道殿許御書』との対比は興味深く感じられました。片や三大秘法を表し(同抄)、片や一大秘法を顕している(『曾谷入道殿許御書』)。私は『老子』にある、「道は一を生じ、一は二を生じ、二は三を生じ、三は万物を生ず」という一節を思い起こしました。「三」という数字は不思議と安定感を与えますが、宗祖はこの『老子』の一節をご承知で、一大秘法と三大秘法という表現をされたのであろうか・・・などなど、いろいろと想像が膨らみました。

 

次回は第6回で最後となりますが、今回に引き続き『法華取要抄』についての講義になります。個別の参加でも可能ですので、多くの方にご参加いただきたいと思います。

(文責・大賀義明)

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