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6月3日(土)、斎藤明先生による「中観思想とは何か―その成立と展開」の講義が一日集中講座として開催された。Zoomオンライン聴講もできるハイブリッド型の講義として執り行われ、大勢の人が参加した。

本講座の目的は、仏教思想史における中観思想とはなにか、またそれはいかなる背景のもとにどのような展開を見ることになったのかを再考することである。

先生は前半、中観思想史を解説された。非有非無の中道説、初期般若経典にみる空・無自性の意味を確認し、ナーガールジュナの思想である『中論』を取り上げ、5世紀初頭まで『中論』と初期註釈文献の思想を初期中観思想、ディグナーガの影響を受けてナーガールジュナの空の思想を推論式に論証する方法を確立したバーヴィヴェーカ(スヴァータントリカ)と、それを批判したチャンドラキールティ(プラーサンギカ)の思想を中期中観思想、8世紀後半にシャーンタラクシタとカマラシーラが瑜伽行中観派(瑜伽行の教説を中観派に取り入れる)を確立した時代を後期中観思想として説明された。さらに、チベット仏教の形成をたどり、前半は広い範囲の内容となった。

後半は、ナーガールジュナの足跡、複数の顔を解説した後、ナーガールジュナの思想(二諦説、空の三義)を取り上げ、縁起と空はイコールであることを明かされた。さらに、ナーガールジュナ以降の思想系譜として、瑜伽行派の唯識と如来蔵・仏性思想それぞれの空の理解について教示され、講義終了となった。

4時間以上におよぶ講義であったが、まったく長時間だと感じさせない内容であり、瞬く間に時が過ぎてしまっていた。先生は高度な知識を聴講者に合わせて分かりやすく話して下さり、質疑応答にも丁寧答えて下さった。講義終了後、その充実した内容に満足した聴講者から大きな拍手が送られた。中観思想史を学ぶ者にとって大変貴重な講義となった。(スタッフ)

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