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令和4年12月24日(土)午後4時30分~、松尾剛次先生による「日蓮伝再考~日蓮神話を超えて」の講義が、対面講義とオンライン配信による、ハイブリッド形式で行われた。

本講義の狙いとして松尾先生は「これまでと異なる視点から日蓮伝を見直す」と述べて、神話に彩られた日蓮伝について歴史学的視点から再考を試みている。

まず中世の基本的な僧の在り方に、おもに鎮護国家の祈祷を行い、特権と制限を併せ持つ官僧と、個人の救済に主眼を置き、官僧に比べて自由な活動が許された遁世僧の二種類があった、と指摘。日蓮は比叡山延暦寺で受戒し官僧としてスタートし、建長5年に立教開宗したのちは遁世僧として活動した。

次に日蓮の生涯について考察する上で考察対象となる日蓮遺文について、記憶違いや神話が書かれている可能性があるため、たとえ真蹟遺文であってもその内容を批判的に検討する必要がある。また日蓮と忍性について、日蓮が忍性を批判する背景に、教義思想の問題のみではなく、信者争奪などの様々な問題があったのではないか。

最後にこれまで不明確とされてきた日蓮の戒壇論について、『三大秘法抄』に説かれる戒壇論の内容から、日蓮は迹門・理の延暦寺戒壇に対し、本門・事の戒壇の建立をイメージしていたのではないか。

以上は講義の一部を要約して紹介したものである。松尾先生は62頁に及ぶ重厚なレジュメをご用意くださり、膨大な資料を凝縮して分かりやすくご講義くださった。講義終了後は、聴講者から熱心な質問が寄せられ、一つ一つに丁寧に対応された。(スタッフ)

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