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10月3日(月)午後6時25分より、磯前順一先生の連続講座「震災転移論—末法の世に菩薩が来りて、衆生を救う?」の第一回、「傾聴の限界 石巻——翻訳不可能な起源」がスタートした。25分始りなのは、パワポで講義の前奏として「この世界の片隅に」の映像と共にコトリンゴの「悲しくてやりきれない」を流すためだ。歌は「このやるせない悲しさの救いはあるだろうか?」と呟き、透明な音の中で聴衆は悲しみの感受性を喚起する。

そして講義は、磯前先生の抑えた語り口によって、沢田研二が主演した『太陽を盗んだ男』や被災した石巻の数々の映像に混じって、精神科医の北山修やフロイト、ラカン、哲学者のデリダやベンヤミンの言葉も映されて、「傾聴の限界」が物語られていく。

磯前先生は打合せ時に、「ロードムービーのような講義をしたい」と話されていたが、まさに受講者は石巻の被災現場を磯前先生と一緒に歩きながら、筆舌しがたいものとはなにか、悲しみは共有できるものなのか、当事者ではないということ、翻訳不可能なもの、他者と私、そして学問とは一体なんなのか考えさせられていく。最後は、「心の傷」の癒しを終わりなき雨に祈るXJapanの「エンドレスレイン」が流されて、まるでドキュメンタリー映画を観たような講義が終了した。

講義後の質疑応答では、司会の菅陽子さんが「感想でもいいです」と声掛けしたこともあって、はじめの質問の方々は講義に触発されての自分の体験を語られたが、その体験を聴くことも実に勉強になった。次回は、11月14日に第2回「差別論 京都 ——不可視の社会構造」が開講される。ぜひ受講して、この画期的な講義を体験して下さい。  (スタッフ)

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