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令和4年4月23日(土)午後4時30分~、新宿・常円寺祖師堂三階において大竹晋先生による「有と無と空と空性と」のご講義が執り行われた。
本講義は令和3年度「法華仏教講座」第5回の講義に当たり2月26日(土)に開催を予定していたが、新型コロナウイルス感染症蔓延の影響により延期され、本日の開催となった。
当日は、仏教の基礎の本格的な習得を目指す方から、仏教研究の専門家まで、幅広い層が会場にお越しくださり、斯界における大竹先生への注目の高さをあらためて認識した次第である。先生には、ご著書に『大乗起信論成立問題の研究』(国書刊行会)『「悟り体験」を読む』(新潮社)など、訳書に『現代語訳 最澄全集』全四巻(国書刊行会)などがある。
今回、大竹先生は、仏典翻訳家としての鋭い視点から、仏教における「存在」とは何かについて、「有」「無」「空」「空性」をキーに、「有」「無」と二諦・三諦の関係性、「空」「空性」と仏性・仏身・涅槃との関係性に注視され、インドの中観思想・唯識思想・如来蔵思想、中国の天台思想・『大乗起信論』・華厳思想、日本の天台思想・密教思想の特徴を浮き彫りにしてくださった。
インドにおける諸法を有とみる立場、空/無とみる立場、また、「空性」をめぐる問題。中国における諸法を真如とみる汎真如論(『大乗起信論』、禅宗)、中道とみる汎中道論(天台顕教)。日本における汎真如論の系統(空海・最澄・日蓮・道元)と汎仏論(天台密教)─と大枠を示されながら講義を進められ、仏教の根本思想展開の特徴を見事に描いた画期的なご研究であった。
2時間のご講義は、大竹先生の穏やかにして真摯なお人柄による温かさと、翻訳を通して仏典に長年沈潜されてきた鋭い慧眼が光る、素晴らしい時間となった。また、質疑応答も大変掘り下げたレヴェルでやり取りされ、仏教研究が最先端で進展していく貴重な様を目の当たりにするができ、関係者一同、大きな喜びを感じた次第である。(スタッフ)

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