Skip to main content

三月二六日(土)、花野充道先生によるご講義「天台教学の四重興廃と日蓮教学の五重相対」が常円寺祖師堂において執り行われた。
中古天台の「四重興廃」と日蓮教学の「五重の相対」という日蓮滅後の教団分裂の原因となった“紛らわしい”ラビリンス(迷宮)に分け入って、はっきりと出口を指し示そうとする試みである。
今回、花野先生は、日蓮教学の根本問題を論ずるに当たり、その前提となった法華教学の源流と展開を微細に解析された。具には、天台智顗の『玄義』『文句』の説示を丹念に辿りながら、智顗教学の四重興廃について精確に論じられ、それとの対比における日本天台教学において四重興廃が独特に高調されていく様相を細説された。そして、天台智顗の「四種釈」や「四重の絶待妙釈」が原意となり、日本の院政期に至って、「四重の浅深思想(四重の展転興廃思想)」が成立したこと。「安然から皇覚(『三十四箇事書』)に至る間に、『阿字秘釈』『阿若集』『顕密一如本仏義』『本理大綱集』、さらに『三大部切合』『念仏宝号』『一実菩提偈』などの文献の成立を設定することによって、天台本覚思想の形成過程を合理的に説明することができると考えている」等と貴重な所見が提示された。

さらに、天台本覚思想には、天台教学系の本覚思想(『三十四箇事書』の本門の絶待妙即ち地獄は地獄乍ら、仏界は仏界乍ら、法爾自体を実相なりと談ずる「本門思想」)と如来蔵思想系の『大乗起信論』の本覚思想があって、「本門思想」の中では、必ずしも「本覚」の語が使われているわけではないと強調。中国天台から日本天台、そして日蓮教学へ展開していく様相を分かり易く解説して下さった。
日蓮の教判論については次回、秋の講座で詳説される予定である。
いつもながらに、ポイントを絞りながらも広く深い知識を駆使され、学問研究の範を示される素晴らしいご講義であった。(波田地克利)

commons

Author commons

More posts by commons