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2021年5月18日(火)午後6時30分より、菊地先生の2021年度後期講座【歴史から考える日本仏教⑦】〈日蓮をはぐくんだ房総地域の歴史と宗教〉第2講「平安時代の房総地域」が行われました。新型コロナウイルスの感染予防のため、前回に引き続きZoomによる動画を生配信し、受講生の方々が各自オンラインで受講しました。

 

前回の「房総地域の古代史」に引き続き、日蓮登場以前の房総地域が政治史的、宗教史的にどのような環境であったのかを幅広い知識と豊富な史料をもとに緻密かつ明瞭にお教え頂きました。

 

本講座では、日蓮に先立つ、房総地域の古代史を中心に参考文献である、千葉県史料研究財団編『千葉県の歴史』、石井進他編『千葉県の歴史』を用いつつ、講義が進められております。関心のある方は是非一読をおすすめします。以下、第2講「平安時代の房総地域」の内容について要点を絞りご紹介いたします。

 

はじめに

前回の講義に引き続き、特に政治史、軍事史を軸として房総地域がどのような特色を持った地域であったのかをご講義いただきました。その中で、蝦夷征服を起点とした戦時体制の強化、それに伴う軍事貴族(後の坂東武士の原型)が勢力を伸ばしていったという流れを簡潔にご教示いただきました。

 

1 平将門の乱

いわゆる38年戦争(奈良時代末期から平安時代初頭にかけての蝦夷征討)により、既に中央政権の統治下にあった板東は同時に征討軍の供給地ともなり、次第に軍事を委ねられるようになっていったこと、それと同時にいわゆる軍事貴族が板東において成立し、彼らが鎮守府将軍等の役職に任じられていたことから、中央集権とは言いながら一種の独立性を有していた可能性があり、かつ同時に蝦夷との関係は戦争だけでなく交易という面を備えていたということを史料をもとにお示しいただきました。

そうした状況下に於いて、かつて武士の成立は荘園の自衛によるものとされてきた定説に対し、近年は交易・部民の強力化(安全な交易のための軍備)と貴種(臣籍降下した者達)の下向と土着が大きな要因であったとされていることを挙げ、その流れの中で平将門の乱について、史料や系図を用いて非常にわかりやすくご教示いただきました。

中央政権への叛逆という面で捉えられがちな平将門の乱について、一族の内訌、官物納入を巡る内紛、中央の有力貴族との関係、さらには将門に対して、追捕凶賊使として任じられた人物もかつて追捕対象であったことなど、毒を以て毒を制する対応が為されたことなど、様々な角度から論じていただき、受講者一同非常に勉強になりました。

 

2 平忠常の乱

続いて、将門の乱収束後の板東では将門を倒した平貞盛流平氏と貞盛の叔父である良文流平氏の間で対立が起こり、国府の襲撃や焼き討ちがあったことをお教え頂きました。その争いの中には、それぞれの背後にいた中央の有力貴族同士の関係性や乱の拡大に伴う新たな貴種の下向(東国における清和源氏の土着化)、貞盛の流れを汲む平氏の台頭といった、後の中世にも大きな影響を与える出来事がいくつも包括されていること、またこれらの乱や災害によって、都から見た房総地域が「亡弊・亡国のイメージ」で捉えられているという事実もご教示頂きました。

 

3 平安後期房総地域の荘園と武士

平忠常の乱以降の房総地域の政治情勢についてご教示頂きました。房総地域の平氏として相馬氏や上総氏、千葉氏らがいましたが彼らは平治の乱で平氏に対立したいわば負け組であり、そうしたビハインドから脱却するために源氏に加担した可能性のあること、地域の特色として海運が盛んであったことから伊勢とのつながりが強く、他の地域に比べ御厨が多く点在していることを簡潔にご教授いただきました。どちらも後の中世に於いて、房総地域の特色を大きく左右するものであると言え、特に御厨については日蓮がその遺文中にも示しているように、日蓮の思想形成に大きな影響を与えています。これらの事実を踏まえて次回以降の講義がなされるということに受講者一同、大きな喜びを感じることが出来ました。

 

おわりに

以上のように、平安時代における房総地域について、広く板東全体を踏まえた視点から論じて頂きました。受講者一同、日蓮をはぐくんだ房総地域に一層の興味関心を抱くことが出来ました。

講義終了後、質疑応答がなされ熱心な質問が寄せられました。それらに対し菊地先生は丁寧にお答えくださいました。誠にありがとうございました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響により、Zoomによる講義となっておりますが、先生のご厚意により講義の様子はオンラインでも公開されております。是非多くの方にご視聴いただき、講義参加のお申し込みをいただきたいと考えております。

次回、第3講「鎌倉幕府の成立と房総地域」は6月15日(火)午後6時30分~開講予定です。詳細につきましては「法華コモンズ」ホームページよりご確認ください。(スタッフ)

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